小児には成人ではあまりみられない感染症があり、薬の使い方も成人とは異なる場合が少なくありません。
今回は代表的な小児感染症と治療薬について、まとめてみます。
かぜ症候群
大半はウイルスが原因であるため、抗菌薬の投与は不要で、対症療法のみとなります。
解熱鎮痛薬・鎮咳去痰薬・抗ヒスタミン薬などが使用されます。
解熱鎮痛薬の第一選択は「アセトアミノフェン」ですが、5歳以上であれば「イブプロフェン(ブルフェン®︎)」も使用可能です。
アセトアミノフェンの坐剤もよく使用されますが、Tmaxが1〜2時間と遅く(内服は30〜60分)、Cmaxも坐剤<内服であることに注意。またジアゼパム・ドンペリドン坐剤と併用の際は「先にジアゼパム・ドンペリドン坐剤」を挿入し「30分後」にアセトアミノフェン坐剤を挿入します(水溶性基剤→油脂性基剤)。
鎮咳去痰薬では、2019年より「12歳未満の小児へのコデイン類含有製剤は呼吸抑制のリスクのため禁忌」となっていることに注意。
抗ヒスタミン薬は眠気のほか、口渇による咽頭痛の増悪や、鼻汁・喀痰の排泄を困難にするなどの悪影響に注意。痙攣の閾値を下げるとされることもあり、近年では処方は控えられることも多いです。
インフルエンザ
内服の「タミフル®︎」「ゾフルーザ®︎」、吸入の「リレンザ®︎」「イナビル®︎」、注射の「ラピアクタ®︎」があります。
タミフルは「1歳未満:6mg/kg/日、1歳以上:4mg/kg/日」、イナビルは「10歳未満:1キット、10歳以上:2キット」など、年齢・体重による用量の違いに注意。
ゾフルーザ®︎は小児への使用経験が少なく、耐性ウイルスの問題もあることから、特に12歳未満の小児に対する積極的な投与は推奨されていません。
また、NSAIDsは「インフルエンザ脳症」「ライ症候群」のリスクがあるため、解熱には「アセトアミノフェン」を使用します。
発症後「最低5日間かつ解熱後2日間」は登園・登校不可。
急性中耳炎・副鼻腔炎
第一選択薬は「アモキシシリン」であり、症状によっては最大90mg/kg/日まで使用するほか、βラクタマーゼ阻害薬が配合された「クラバモックス®︎」が使用されることもあります。
耐性菌である「BLNARインフルエンザ菌」の関与が考えられる場合にはセフェム系薬が使用されることもありますが、特に乳幼児には「ピボキシル基による低カルニチン血症」に注意。
ほかに「オゼックス®︎」「オラペネム®︎」が使用されることもあります。オラペネム®︎もピボキシル基をもつため注意。
詳細は耳鼻咽喉科感染症治療薬の使い分けを参照。
咽頭・扁桃炎
多くは(特に咳・鼻炎などを伴う場合)ウイルス感染症であり抗菌薬は不要ですが、時にA群溶血性レンサ球菌(溶連菌)を主とする細菌感染が起こる場合があります。
咽頭痛とイチゴ舌が特徴的ですね。
この場合の第一選択薬としては「アモキシシリン」が使用されます。
リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を予防するため、やや長めの「10日間程度」投与します。
ただし、症状のやや似ている「伝染性単核球症」の場合に誤って投与すると、高率に皮疹を生じるため注意が必要です。
ペニシリンアレルギーなどで使用できない場合は「キノロン系薬」「クリンダマイシン」などを使用することがあります。小児に使用できるキノロン系薬としては「オゼックス®︎」があります。
詳細は耳鼻咽喉科感染症治療薬の使い分けを参照。
肺炎
小児の肺炎にはウイルス性肺炎・細菌性肺炎・マイコプラズマ肺炎(非定型肺炎)などがあります。
ウイルス性肺炎の場合は対症療法・経過観察となります。
細菌性肺炎の場合は咽頭・扁桃炎同様「アモキシシリン」「クラバモックス®︎」が第一選択薬となり、第二選択薬としては「オゼックス®︎」などを使用します。
マイコプラズマ肺炎(頑固な咳や発熱が続くのが特徴)の場合は「マクロライド系薬」「ミノサイクリン」が第一選択薬ですが、近年マクロライド耐性株が増加していることや、8歳未満の小児にミノサイクリンを投与すると永久歯の黄染などを生じることに注意。
詳細は市中肺炎治療薬の使い分けを参照。
おたふくかぜ(流行性耳下腺炎)
耳下腺腫脹・疼痛と発熱が主症状。1〜10%程度に頭痛や悪心・嘔吐を伴う髄膜炎を合併するため注意が必要です。その他、精巣炎や難聴を合併することがあります。
ウイルス性のため抗菌薬は不要で、発熱・疼痛に対して「アセトアミノフェン」が使用されたりします。
腫脹発症後5日間は登園・登校不可。
ワクチンは任意接種で「1歳以降早期」「小学校就学前1年間」の2回の接種が推奨されています。ワクチンによる無菌性髄膜炎が報告されているため敬遠されがちですが、その割合は0.01〜0.1%と感染自体による合併症より低頻度ではあります。
麻疹
麻疹には「カタル期(前駆期)」と「発疹期」があり、カタル期には発熱・鼻汁・咳・結膜充血や、コプリック斑(口腔内頬粘膜の白い斑点)がみられ、いったん解熱後、発疹期には更なる高熱・発疹がみられます。
中耳炎・肺炎を合併し重症化することもありますが、MRワクチンが定期接種(「1歳」「小学校就学前1年間」の2回)となり、現在では患者数は減少しています。
治療は対症療法となります。
風疹
「三日ばしか」ともよばれ、その名の通り三日前後続く発疹や頸部・耳の後ろの腫脹、軽い発熱などがみられます。
麻疹同様、MRワクチンの定期接種により患者数は減少しています。
妊娠初期の感染により「先天性風疹症候群」のリスクがあるため、妊婦さんは抗体の確認(ない場合はワクチン接種)が大切です。
治療は対症療法となります。
水痘
水痘・帯状疱疹ウイルスが原因。
「水ぼうそう」ともよばれ、痒みを伴う皮疹が全身にみられます。
ワクチンの定期接種(「1歳以降早期」「その半年〜1年後」の2回)により患者数は減少しています。
水痘に適応のある薬としては「ゾビラックス®︎(顆粒/DSのみ)」「バルトレックス®︎」があります。
ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ
致命率の高い疾患でしたが、4種混合ワクチンの定期接種により患者数は減少しています。特にポリオは現在わが国における自然発生はありません。
4種混合ワクチン(DPT-IPV)はジフテリア(D)・百日咳(P)・破傷風(T)・ポリオ(IPV)を予防するもので、生後3ヵ月以降から開始し、3〜8週間隔で3回、3回目の約1年後に4回目を接種します。
その後11歳〜13歳の間に2種混合ワクチン(DT)を接種します。
百日咳は生後6ヵ月未満の乳児が感染すると致命的になることがあり「顔を真っ赤にして咳込み出したら」注意が必要です。治療には「エリスロマイシン」「クラリスロマイシン」が使用されます。
伝染性紅斑
ヒトパルボウイルスB19による感染症。頬がリンゴのように赤くなることから「リンゴ病」ともよばれます。
その他、腕や脚に網目状の紅斑が起こったり、年長児は痒みや関節痛を訴えることがあります。
治療は対症療法で、痒みや関節痛に対して「抗ヒスタミン薬」「アセトアミノフェン」が使用されます。
完治までは日光を避けることが大切です。
手足口病
コクサッキーウイルスやエンテロウイルスによる感染症。その名の通り手掌・足裏・口内などに小水疱を生じる疾患です。発熱がみられることもあります。
夏〜秋にかけて流行しやすく、ヘルパンギーナとの鑑別も重要です。
通常は治療の必要はありませんが、まれに髄膜炎を合併するため、頭痛や悪心・嘔吐などの有無を観察する必要があります。
ヘルパンギーナ
主にコクサッキーウイルスによる感染症。
手足口病と同時期に流行し、口内(特に咽頭)に小水疱がみられる点も共通しています。
ヘルパンギーナは手足の小水疱はみられないことや、高熱が出ることが特徴です。
治療は対症療法で、発熱・咽頭痛に対して「アセトアミノフェン」などが使用されます。
感染性胃腸炎
夏は細菌性、冬はウイルス性の傾向がありましたが、近年ではこの通りでない場合もあります。
細菌では「カンピロバクター」「大腸菌」「サルモネラ」、ウイルスでは「ロタウイルス」「ノロウイルス」が多いです。
ウイルス性の場合は抗菌薬は使用せず、脱水予防の補液と整腸剤・解熱剤・吐き気止めにて対症療法を行います。
細菌性の場合の第一選択薬としては、上記の起炎菌に有効な「ホスホマイシン」を使用します。起炎菌が同定された場合、例えば「クラリスロマイシン」がカンピロバクターに有効です。「ノルフロキサシン」は抗菌スペクトルが広いです。
伝染性膿痂疹
「とびひ」ともよばれ、ひっかき傷などに黄色ブドウ球菌やA群溶連菌が感染することによって起こり、さらにかき壊すことによって連鎖的に感染が起こります。
セフェム系薬の内服や「フシジンレオ®︎軟膏」などの抗菌外用薬にて治療します。痒いところをひっかいて伝播させないよう、抗ヒスタミン薬で痒みを抑えることもあります。
MRSAが分離された場合には治療方針を変更する必要があります。



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