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精神科の薬は難しい!と思っている医療関係者の方は多いかと思います。
処方を受ける薬剤師の方も、医師の処方意図を汲み取りづらかったり、どう説明して良いかわからなかったりすることもあるのではないでしょうか。
実際、医師によって考え方は様々なため、答えをひとつにすることは難しいですが、一般的な抗精神病薬の特徴をまとめてみたいと思います。
現在では定型抗精神病薬はあまり使用されないため、非定型抗精神病薬に絞って解説したいと思います。
リスペリドン(リスパダール®︎)
陽性症状の改善効果が高く、幻覚・妄想・興奮の強い方へ良い適応となります。
精神症状発現時の頓服としてもよく使用されます。
最大量は12mgですが、6mgを超える辺りから錐体外路症状(以下、EPS)があらわれやすくなるため注意。
6mg以上の高用量を用いても、有効性は頭打ちになるという報告もあり、必要以上の増量は推奨されません。
脳内移行がやや悪く下垂体に影響しやすいため、高プロラクチン血症があらわれやすいです。
2週に1回の持効性注射剤(リスパダール®︎コンスタ)もあり、アドヒアランスの低い方への対応も可能。
適応外ではありますが
・双極性障害躁エピソード ・認知症における行動・心理症状 ・過活動性せん妄
などにも応用されます。
パリペリドン(インヴェガ®︎)
リスペリドンの活性代謝物。
内服はOROSという技術を使用しての徐放製剤となっており、血中濃度にピークがありません。
4週に1回の持効性注射剤(ゼプリオン®︎)もあり、この単剤療法で4ヵ月以上安定している場合は、12週に1回のゼプリオン®︎TRIという製剤に切り替えることも可能です。
因果関係は不明ですが、持効性注射剤使用後に死亡例が確認されており、精神症状が不安定な方(急激な精神興奮や多剤併用など)などへの投与は避けること、とされています(ブルーレターあり)。
幻覚・妄想の強い方へ良い適応となるのはリスペリドンと同じですが、興奮の強い方へは慎重に投与すべき薬です(鎮静作用も弱め)。
オランザピン(ジプレキサ®︎)
幻覚・妄想・興奮・抑うつなど幅広い症状に高い効果を示し、統合失調症のほか、うつ病・双極性障害・認知症の周辺症状など様々な場面で使われます。
反面、体重増加作用が最強クラスなので、耐糖能異常のある方や、体型を気にされる方へは使いづらいかもしれません。
注射剤もありますが、こちらは持効性ではなく興奮時の緊急用。
クエチアピン(セロクエル®︎)
上記3種と比較すると幻覚・妄想への効果はやや弱く、どちらかというと不安・不眠・抑うつなどの症状に比較的少量で用いられることが多いです。
糖尿病には禁忌ですが、米国の3学会合同報告によると、オランザピンやクロザピンに比べればリスクは小さく、実際にはリスペリドンと同程度ともいわれています。ただし過去に緊急安全性情報が発出されており、死亡例もあることから注意が必要です。
ペロスピロン(ルーラン®︎)
効果は mild。副作用も mild。
セロトニン5-HT1Aの部分作動作用があり、不安・抑うつへの効果が期待できるため、どちらかといえば陰性症状や気分障害的な症状に用いられることが多いです。
薬に敏感で副作用をきたしやすい方などにも。
ブロナンセリン(ロナセン®︎)
幻覚・妄想への効果が高いです。
反面、鎮静作用は少ないので、興奮の強い方には他薬を。逆に言えば眠気は少ないです。
EPSには注意が必要ですが、代謝系の副作用も起こしにくいです。脳内移行がよく、高プロラクチン血症の頻度も低め。
空腹時は吸収が低下するため、「食後投与」となっています。
テープ剤もあり、食事の影響の回避や、アドヒアランス向上が期待できます。錠剤との換算は「1:5(錠4mg:テープ20mg)」。
主に統合失調症に使用しますが、双極性障害の躁エピソードなどにも。
アリピプラゾール(エビリファイ®︎)
統合失調症・双極性障害の躁エピソード・うつ病・小児の自閉スペクトラム症など幅広い適応あり。
用量によって効き方が変わり、幻覚・妄想・躁へは比較的高用量、うつでは低用量が基本。
鎮静作用は少なく、眠気は少なめ。
全体的に副作用は少なめですが、アカシジアには注意が必要。
液剤や、4週に1回の持効性注射剤もあり。
クロザピン(クロザリル®︎)
精神科に特化した病院・薬局以外は目にすることの少ない、切り札的存在。
使用にあたっては、登録された医療機関で18週間の入院より開始する必要があります(調剤する薬局も登録が必要)。
治療抵抗性統合失調症に対し、30〜60%程度の改善率が見込めます。
無顆粒球症・耐糖能異常・心筋炎などの重大な副作用(死亡例もあり)があり、厳密な管理が必要。
EPSは比較的少なめ。
アセナピン(シクレスト®︎)
幻覚・妄想・興奮・躁・うつ、と様々な症状への効果が期待されています。
一方、オランザピンのような体重・糖代謝への影響は少なめで、糖尿病患者へも使用可能です。
鎮静作用もあるため、眠気はやや出やすいかもしれません。そのため添付文書上は1日2回ですが、臨床では夕または就寝前にすることも多いです。
舌下錠であり、服用後に舌のしびれが起こることがあります。
ブレクスピプラゾール(レキサルティ®︎)
アリピプラゾールのマイナーチェンジ。
基本的な対象患者はアリピプラゾールと近いと考えて良いと思われますが、幻覚・妄想への作用の向上、抑うつ・陰性症状の改善効果の向上が見込まれます。
アリピプラゾールよりも5-HT2Aの遮断作用が強いため、投与初期の不安・焦燥やアカシジアが起こりにくいとされています。
用量幅が狭く、微調整がややしにくいかもしれません。専門医はアリピプラゾールと併用して細かな調整を行うこともあります。
ルラシドン(ラツーダ®︎)
ドパミンD2・セロトニン5-HT2Aにアンタゴニストとして作用するほか、5-HT1Aのパーシャルアゴニスト・5-HT7のアンタゴニストとしての作用による「抗うつ効果」に期待されています。
また、ヒスタミンH1・ムスカリンM1に対する作用は弱いため、眠気・抗コリン性副作用が少ないです。
CYP3A4関連の禁忌がやや多く「クラリスロマイシン」も禁忌なため注意。
空腹時は吸収が低下するため、「食後投与」となっています。
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