音声解説はコチラ↓ 耳で覚える薬の使い分け〜インスリン製剤〜インスリン製剤の使い分けを解説しています。音声のみで恐縮ですが、通勤途中や寝る前、スキマ時間の勉強に。文章をご希望の方はブログをご参照ください。インスリン製剤の使い分け/※2021/02/13現在の情報です。定期的に更新致しますが、最新の情報は添...
現在では優れた内服薬も多数登場していますが、インスリン依存状態や妊婦の方など、いまでも必要不可欠なインスリン製剤。
インスリンポンプによる持続投与法もあるほか、近年では内服化も検討されています。
今回は自己注射に使用されるインスリン製剤の使い分けについて、まとめてみます。
作用時間による使い分け
インスリン製剤には「超速効型」「速効型」「中間型」「持効型」「混合型」がありますが、実際に目にするものは「超速効型」「持効型」の2種類が多いです。
この理由は「生理的なインスリン分泌に近づけるため」です。
生体インスリンの「基礎分泌」に近い動態を示すのが「持効型」であり、生体インスリンの「追加分泌」に近い動態を示すのが「超速効型」です。
イメージ図を調べてみるとわかりやすいですが、この2つが生理的な分泌に最も近く、用量調節もしやすいため、一般的に使われるわけです。
体質や病態・ライフスタイルによっては他のタイプが使用されることもありますが、一般化することが難しいため、今回は「超速効型」「持効型」の2つをメインに解説します。
製剤ごとの特徴
超速効型
現在広く使用されている超速効型製剤としては「ノボラピッド®︎」「ヒューマログ®︎」「アピドラ®︎」があります。
「ノボラピッド®︎」は「フレックスタッチ®︎」「イノレット®︎」とデバイスが豊富です。
「ヒューマログ®︎」はコストパフォーマンスに優れます。また、0.5単位刻みで調節可能な「HD」製剤があります。
「アピドラ®︎」は3剤の中で最も作用発現・消失が速く、生理的な分泌に近い挙動を示します。
超超速効型?
長らく使用されている上記製剤ですが、生理的なインスリン分泌を再現するには、実はまだ「速効力」がやや不足していました。
そこで開発されたのが「ノボラピッド®︎」の後継機である「フィアスプ®︎」と、「ヒューマログ®︎」の後継機である「ルムジェブ®︎」です。
それぞれ、同成分の添加剤を変更することで、より速効性を実現しました。
よって、用法は「食前2分以内〜食事開始後20分」と、従来の超短時間型とは異なっています。
これは実際に使用する方の投与タイミングに即していることも多く、これらの開発により、更に効果的に食後高血糖を改善できるかもしれません。
持効型
現在広く使用されている持効型製剤としては「ランタス®︎/ランタス®︎XR」「レベミル®︎」「トレシーバ®︎」があります。
半減期は以下のようになっています。
レベミル®︎<ランタス®︎<ランタス®︎XR<トレシーバ®︎
半減期の長い「トレシーバ®︎」は血中濃度にピークをもたず、安定した薬効と夜間低血糖の防止が期待できます。投与時間は±8時間のズレが許容されており、在宅などで必要な際は隔日投与を検討する場合もあります。
「ランタス®︎」は適度な持続時間で、トレシーバ®︎より血糖変化があらわれるのが速いため、入院での開始時など、用量決定がしやすい利点があります。
「ランタス®︎XR」はランタス®︎の血中濃度をさらに安定するよう設計されたものです。これのみ「空打ち3単位」なので注意。「通常→XR」の切替は同単位でOKですが、「XR→通常」の切替は低血糖リスクを考慮してやや低用量(80%程度)を推奨。
「レベミル®︎」は半減期が短く、必要に応じて1日2回投与による調節も可能です。
デバイスによる使い分け
インスリン製剤は、理論的な特徴も重要ですが、「患者さんが正しく使用できるか」という点も非常に大切です。
「フレックスタッチ®︎」は「ボタンが押しやすい」「弱い力で注入できる」「単位設定時や注入終了時に音で確認できる」などの改良が加えられています。
「イノレット®︎」は握力や視力の低下した方でも使いやすいよう設計されており、単位の設定ミスを防ぐ「トマレット®︎」や、片手で操作可能となる「カタレット®︎」といった補助具もあります。
デバイスを統一する観点から
「ノボラピッド®︎注フレックスタッチ®︎」&「トレシーバ®︎注フレックスタッチ®︎」
「ノボラピッド®︎注イノレット®︎」&「レベミル®︎注イノレット®︎」
などを選択する場合もあります。
レジメンの例
BBT(Basal Bolus Therapy)
インスリンの絶対的適応や、相対的適応でも血糖コントロールが著しく悪い場合などは、持効性インスリン製剤に加え毎食前に超速効型インスリン製剤を使用するBBT(Basal Bolus Therapy)が行われます。
使用単位は、絶対的適応の場合は「0.5〜0.6単位/kg/日」、相対的適応の場合は「0.2〜0.3単位/kg/日」あたりから始めるのが目安です。
「絶対的適応」「体重60kg」であれば「1日30〜36単位」ですね。
その後は血糖測定値をみながら適宜増減します。
この治療法は生理的なインスリン分泌に近づけやすいですが、低血糖リスクや、頻回の注射によるQOLの低下や打ち間違いの可能性に注意が必要です。
BOT(Basal supported Oral Therapy)
持効性インスリン製剤と経口血糖降下薬の組み合わせ。
外来で導入しやすい方法であり、「0.1単位/kg/日」程度から始めます。
ここから始め、血糖コントロールに応じて超速効型インスリンを追加していき、最終的にBBTにつなげる場合もあります。
また、BOTとGLP-1受容体作動薬、という組み合わせもあります。食欲・体重減少効果を期待して肥満傾向の方に使ったりします。「ゾルトファイ®︎」という配合製剤もありますね。
超速効型3回注射法
食後高血糖の是正を主な目的に、超速効型インスリン製剤のみを使用する方法。
持効型を使用しないため、空腹時低血糖や夜間低血糖のリスクを抑えることができます。
混合型2回注射法
混合型インスリン製剤を朝・夕の2回注射する方法。
「ノボラピッド®︎」「トレシーバ®︎」を混合した『ライゾデグ®︎』の登場により混和が不要になり、より導入しやすくなりました。
注射回数を減らすことができ、特に学校・仕事などで昼の注射がしにくい方などにはよい適応となります。
一方で、昼食後の高血糖リスクや、用量調節がしづらいといったデメリットもあります。
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