突然走り出す、飛び降りなどの異常行動との関連を指摘され、10代の患者への使用が原則禁止とされていたタミフルが、18年6月に解禁されました。
とはいえ、そのくらいの年代の子を持つ親御さんにとっては、安易に薬を飲ませるのも不安に思うことでしょう。
ここでは、異常行動に関するデータをもとに、薬の影響や注意点などをご説明します。
【治療法による異常行動率に差は見られない】
2018/19シーズンに重度の異常行動を起こした患者が服用していた薬を調べた研究があります。
それによれば
抗インフルエンザ薬なし:19%
タミフル:19%
リレンザ:10%
イナビル:17%
ゾフルーザ:34%
となっています。
ん?じゃあむしろゾフルーザが危険なの?
と感じる方もいると思いますが、そもそもこのシーズンはゾフルーザの処方割合が約45%と高かったため、服用していた人が多かったのです。
その辺りを加味すると、飲む薬による差はほぼない、と考えて良いでしょう。
抗インフルエンザを使わなかった方も2割程度いるわけですから、薬を飲まなければ安心、というわけではないのです。
ちなみに、タミフルが解禁されたからといって、異常行動の報告数が増えたということもありませんでした。
【どういう人に起こりやすいか】
過去10年程度のデータを見ると、傾向に大きな差はみられません。
ざっと箇条書きにしてみます。
・平均年齢は8〜10歳(小学生〜中学生に多い)
・女児より男児の方が2〜3倍多い
・平均体温は39℃強(発熱後2日以内の発症が多い)
つまり、これらに当てはまる方はリスクが大きくなるので、薬の有無に関わらず、インフルエンザに罹ったらより注意が必要ということです。
【予防する方法はあるの?】
とりあえず、そもそもインフルエンザに罹らないように気をつけよう。
と、それじゃ何の参考にもならないので(笑)、ひとつデータを示すと、
「異常行動を起こした方の割合は、予防接種を受けていない方が、受けた方より2〜3倍多かった」
となっています。
予防接種をすることでリスクを減らせる可能性があるというわけですね。
ちょっと話はそれますが、予防接種のリスクについて少しだけ。
時々TVなどで、「予防接種後に重大な副作用!」みたいな放送がされることがあるので、不安に思われる方もいると思います。
少し前のデータですが、平成28年シーズンの、インフルエンザワクチンの副反応疑い報告数は「0.0005%(20万人に1人)」、死亡報告数は「0.00001%(1000万人に1人)」となっています。
他方、インフルエンザによって「死亡」する方はというと、直接の死因となったものを少なく見積もって1000人としても、「約13万人に1人」。
ここにインフルエンザから肺炎になったのちに死亡した方などを含めると数倍になりますから、「数万人に1人」くらい、インフルエンザに関連して亡くなる方がいるともいえます。
かなり乱暴な比較ですみませんが、こんなざっくりした計算でも、「ワクチンによる被害」より「インフルエンザそのものによる被害」の方が大きいことがわかります。
別に私はワクチンメーカーの回し者ではありませんし(笑)、予防接種を推奨しているわけでもありませんが、「TVでやってたから」なんて理由で決めるのではなく、自分で調べて考えた上で、医療を受けていたただきたいと思います。
【おわりに】
今回はインフルエンザによる異常行動を中心に書かせていただきましたが、それに限らず、子供の治療や服薬に関しては、大人も知識を持って、適切な医療を行ってほしいと思います。
病院や薬局の外では我々の目は届かないので、親御さんの協力が不可欠なのです。
というわけで、立派に親をやってる方々には、くだらないことで無理をせず、心に余裕を作って、子供のために力を使ってください。笑
本当に大切にすべき人だけ、大切にしよう。
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