【薬剤師執筆】漢方薬(便秘)の使い分け

薬の使い分け

便秘は多くの人が悩まされている症状であり、西洋薬のほか、漢方薬にも多くの種類があります。

今回はそれらの使い分けについて、まとめてみます。

大黄を含む?冷えはある?

便秘に対する漢方薬の大きな分類のひとつに、「大黄を含むか否か」ということがあります。

大黄は胃腸にこもった熱を冷ます作用があり、それによって硬くなった便を柔らかくします。

逆にいえば、冷えのある場合は大黄を含まない漢方薬のほうが適切なことが多いです。

また、妊婦・授乳婦に対しては大黄を含まないもののほうが無難です。

大黄を含む漢方としては

  • 大黄甘草湯(だいおうかんぞうととう)
  • 調胃承気湯(ちょういじょうきとう)
  • 大承気湯(だいじょうきとう)
  • 桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
  • 潤腸湯(じゅんちょうとう)
  • 麻子仁丸(ましにんがん)
  • 桂枝加芍薬大黄湯(けいしかしゃくやくだいおうとう)

大黄を含まない漢方としては

  • 小建中湯(しょうけんちゅうとう)
  • 大建中湯(だいけんちゅうとう)
  • 加味逍遙散(かみしょうようさん)
  • 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)

などがあります。

大黄甘草湯

漢方の中ではベーシックな便秘薬。

作用は強くはありませんが、使いやすい漢方薬です。

便が硬い場合には別の漢方薬がよいかもしれません。

吐き気を伴う場合にも適します。

承気湯類

「承気」とは「気を上から下に伝える」という意味があり、瀉下作用のある漢方類です。

塩類下剤のような作用をもつ芒硝を含み、便が硬い場合に適します。

作用の強さとしては

調胃承気湯 < 大承気湯

であり、大承気湯は体力がある人に短期間使用するに留めます。

桃核承気湯は月経などに伴う精神症状があることが使用の目安になります。

潤腸湯・麻子仁丸

ともに高齢者などの硬便に使われることが多いです。

大黄の量は麻子仁丸のほうが多いため、瀉下作用もやや強いと考えられますが、便や皮膚の乾燥が強い場合には、その名の通り潤いを与える潤腸湯がよいこともあります。

建中湯類

「建中」とは「中(おなか)を丈夫にする」という意味があり、小建中湯や大建中湯は冷えを伴う便秘・下痢・腹痛によく使われます。

温める強さは

小建中湯 < 大建中湯

であり、特に大建中湯は漢方薬の中でも使用頻度が最多ですが、これは術後のイレウス予防にエビデンスがあることも理由です。

ちなみに黄耆建中湯は虚弱・多汗・寝汗など、当帰建中湯は主に腹痛や痔による疼痛緩和のために使用します。

桂枝加芍薬(大黄)湯

桂枝加芍薬湯は下痢型過敏性腸症候群、桂枝加芍薬大黄湯は便秘型過敏性腸症候群などに用いられます。

おまけ〜メンタルにも?〜

桂枝加芍薬湯と四物湯の合方である「神田橋処方」というものがあり、嫌な記憶のフラッシュバックに用いられることがあります。

似た目的で、小建中湯が使用されることもあります。

「脳腸相関」「腸は第二の脳」という言葉もあるように、腸に作用する薬がメンタルにも有効なことがあるようですね。

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