【薬剤師執筆】漢方薬(食欲不振)の使い分け

薬の使い分け

食欲不振に対しては、西洋薬でも消化管運動を促進する薬が使われたりしますが、漢方が得意とする分野でもあります。

今回はそれらの使い分けについて、まとめてみます。

はじめに〜脾胃気虚〜

食欲不振は脾や胃を動かす気が不足していることが多く、これを脾胃気虚といいます。

以下の漢方はいずれもこの気を補い、食欲不振を改善する作用があります(補気作用)。

六君子湯・四君子湯

代表的な補気剤で、食欲不振のほか、胃痛、悪心・嘔吐などにも使用されます。

気が上昇し、上部消化管に症状があらわれた際に適します。

基礎・臨床研究も進んでおり、胃排出促進・貯留能改善のほか、食欲促進作用をもつ消化管ホルモンであるグレリンの分泌を促進するとされています。

四君子湯は補気剤のベースとなる漢方で、体力が低下している人にはこちらを使用することがあります。

補中益気湯

六君子湯と比べ補気作用が強く、倦怠感や息切れ、食後の眠気など全身症状の強い際に適します。

気を持ち上げる作用があるため、下痢や頭痛、めまいなど気が下に落ち込んだ症状にも。

ちなみに、元気を補う効果が高いことから「医王湯」とも呼ばれます。

十全大補湯

補気剤である四君子湯と補血剤である四物湯を合わせた八珍湯に黄耆と桂皮を加えたもので、気血双補剤の代表。

補中益気湯と似ていますが、貧血や冷え、血色が悪いなど、血に関する症状がある場合はこちらを使用します。

術後や産後、抗がん剤治療中などに使うことも多いです。

人参養栄湯

十全大補湯と似ていますが、不安・不眠・寝汗など精神症状が出ている際に有効です。

咳など呼吸器系の症状緩和を目的のひとつとすることもあります。

清暑益気湯

主に夏バテによる食欲不振・倦怠感・下痢などに使用します。

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