現実的な話になりますが、薬局の健全な経営のためには、避けて通ることもできない損益管理。
今回は薬局における「おカネ」の話について、まとめてみます。
売上総利益と営業利益
売上総利益
売上総利益=売上−売上原価
「売上総利益」はビジネスの現場では「粗利」と言い、簡単に言えば「(売れた金額)−(仕入・製造にかかった金額※1)」です。
薬局で言うと「(調剤やOTCの売上)−(仕入金額※2)」となります。
※1)製造に関わる人件費はここで計上されますが、 通常、薬局薬剤師は「製造」はしないため、 「営業利益」の計算における「販管費」で 計上されます。
※2)正確には売上原価は (期首在庫金額)+(仕入金額)−(期末在庫金額) はじめに500万あって、1,000万買って、 700万残った場合、 実際に売上に関わった金額は 500万+1,000万−700万=800万なので、 これが売上原価です。 「買った総額」ではないため、注意。
薬局における「売上」は大きく「薬剤料」と「技術料」に分けられます。
慢性疾患で長期投与となる内科や、抗がん剤や新薬を多用する大学病院、多剤併用の精神科の門前などは薬剤料は高めです。反対に急性疾患の多い小児科・耳鼻咽喉科のほか、眼科・皮膚科などは薬剤料は低めです。
技術料の面では、一包化の多い内科・精神科の門前や、施設調剤を行なっている薬局、かかりつけの多い薬局などは高くなります。外用が多く内服調剤料を取りにくい眼科・皮膚科などでは技術料は低めです。
薬剤師の職能発揮という意味では、技術料売上を増やしていきたいところ。
営業利益
営業利益=売上総利益−販管費
販管費(販売費及び一般管理費)とは
・人件費 ・交際費 ・車両費 ・広告宣伝費 ・教育研修費 ・旅費交通費 ・通信費 ・水道光熱費 ・租税公課(薬局では主に消費税か) ・保険料 ・賃借料 ・雑費
などといった、いわゆる「経費」のこと。
薬局において多くを占めるのは「人件費」「租税公課(消費税)」「賃借料」あたりでしょうか。
営業利益とは、これらの経費を売上総利益から差し引いて、残った金額です。
この営業利益がマイナス(営業赤字)となった場合「本業で儲けが出ていない」となり、よろしくない状況ということになります。
経費削減のためには「残業代を減らす」「仕入金額を減らす(消費税↓)」などの対策が考えられます。
在庫を絞る意味
役職についていない人でも、「在庫を減らせ!(適正在庫を維持せよ!)」との指示はよく受けると思います。その意味についても少し述べたいと思います。
月末在庫を絞る意味
上記にて、仕入金額を減らせば消費税を減らせると述べましたが、結局翌月に購入することを考えると、基本的には毎月在庫を絞るメリットはそれほど大きくないと思われます。
経営者や株主目線では、適正在庫を維持することによって毎月のキャッシュフローが改善されるというメリットはあります。
また、不動在庫や期限切れに対する意識づけがしやすくなり、余計な廃棄を削減できるなどの利点も考えられます。
個人経営などの小規模な薬局では、買い過ぎるとキャッシュが減り、資金繰りが悪化することもあるため、毎月絞る意味はあるかもしれません。
ただし、当然ながら絞れば絞るほど欠品リスクは上がるため、サービスの質の低下には注意が必要です。
期末在庫を絞る意味
計算上、期末在庫が多いと売上総利益が増え、連動して「法人税等」が増えるため、こちらは税制上のメリットがあります。
また、特に重要なのは薬価改定前で、在庫の資産価値が減るため、ここではきっちり絞ることをお勧めします。
<例> 引き下げ率5%、期末在庫1000万円とすると 1000万円×0.05=50万円 が一夜にして減る!
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