音声解説はコチラ↓ 耳で覚える薬の使い分け〜耳鼻咽喉科感染症治療薬〜【薬剤師・勉強】耳鼻咽喉科感染症治療薬の使い分けを解説しています。音声のみで恐縮ですが、通勤途中や寝る前、スキマ時間の勉強に。文章をご希望の方はブログをご参照ください。耳鼻咽喉科感染症治療薬の使い分け/※2021/03/14現在の情報です。定期的に更新致しますが...
耳鼻咽喉科領域で主に問題となる細菌は「肺炎球菌」「インフルエンザ菌」「モラクセラ・カタラーリス」「A群溶血性レンサ球菌(溶連菌)」などです。
今回はこれらによる「中耳炎」「副鼻腔炎」「咽頭・扁桃炎」の治療薬について、まとめてみます。
中耳炎・副鼻腔炎
耳鼻科領域の代表的疾患。
多くは風邪などのウイルス感染が発端となり、数日後に細菌感染に移行することで発症します。
中耳炎・副鼻腔炎の起炎菌
中耳炎と副鼻腔炎の起炎菌は「肺炎球菌」「インフルエンザ菌」が多く、「モラクセラ・カタラーリス」がそれに続きます。
また、耐性菌として「PRSP(ペニシリン耐性肺炎球菌)」「BLNAR(βラクタマーゼ非産生アンピシリン耐性)インフルエンザ菌」などがあります。
近年では肺炎球菌ワクチンが定期接種となったことなどから、肺炎球菌およびPRSPは減少傾向となっています。
モラクセラ・カタラーリスについては、ほぼすべての菌株がβラクタマーゼを産生し、抗菌薬に抵抗を示します。
以上より
- 各起炎菌に対する薬剤感受性
- 耐性に勝つための用量
- βラクタマーゼ対策
などが鍵となります。
中耳炎・副鼻腔炎の治療薬
アモキシシリン/クラブラン酸
・アモキシシリン(AMPC) または ・アモキシシリン/クラブラン酸(CVA/AMPC)
を第一選択薬とすることが多いです。
「セフェム系薬では肺炎球菌を除菌できない」「βラクタマーゼ耐性菌対策」などがその理由です。
商品名では「サワシリン®︎」「パセトシン®︎」「オーグメンチン®︎」「クラバモックス®︎」。
肺炎球菌やインフルエンザ菌の場合、アモキシシリンとして1500〜2000mg/dayと、添付文書の通常量より高用量が推奨されています(小児であれば最大90mg/kg/day)。
成人の場合、オーグメンチン®︎単独で増量するとクラブラン酸が過量となり、吐き気や下痢などの消化器症状が出やすくなることから、「オーグメンチン®︎」「サワシリン®︎」を併用してアモキシシリンの量のみを増やす、いわゆる『オグサワ処方』というものも。
一方、近年問題となっているBLNARなどではペニシリン系薬に対する感受性が低下しているため、以下の代替薬が選択されることもあります。
第三世代セフェム系薬
「組織移行性が低い」「バイオアベイラビリティが低く、だいたいウンコになる」「おまじない処方として乱用されてきた」などと、ネガティブな面が指摘されやすい薬ですが、BLNARインフルエンザ菌に対してはペニシリン系薬よりこちらが有効です。
「セフジトレンピボキシル(CDTR-PI:メイアクト®︎)」の抗菌活性が高いといわれます。
「セフカペンピボキシル(CFPN-PI:フロモックス®︎)」も比較的使用されます。
ただし、ピボキシル基を有する抗菌薬は新生児・乳幼児・小児に「低カルニチン血症に伴う低血糖・昏睡・脳症」を起こす可能性があるため、小児や周産期での投与には注意が必要です。
キノロン系薬・カルバペネム系薬
安易な使用は耐性の温床となるため避けるべきですが、抗菌スペクトルが広く、重症例・治療抵抗性の場合には、投与を検討する価値のある薬剤群です。
成人におけるキノロン系薬は「レスピラトリーキノロン」と呼ばれる、呼吸器感染症に奏功しやすい薬剤が主に使用されます。
具体的には以下の薬です。
・ガレノキサシン(GRNX:ジェニナック®︎) ・シタフロキサシン(STFX:グレースビット®︎) ・レボフロキサシン(LVFX:クラビット®︎) ・モキシフロキサシン(MFLX:アベロックス®︎)
小児の場合は、安全性が確認されている「トスフロキサシン(TFLX:オゼックス®︎)」が使用されます。
カルバペネム系薬としては、唯一の内服薬として「テビペネムピボキシル(TBPM-PI:オラペネム®︎)」があります。
こちらは一部のセフェム系薬と同様にピボキシル基をもつため、小児は低カルニチン血症に注意。
咽頭・扁桃炎
多くは(特に咳・鼻炎などを伴う場合)ウイルス感染症であり抗菌薬は不要ですが、時にA群溶血性レンサ球菌(溶連菌)を主とする細菌感染が起こる場合があります。
咽頭痛とイチゴ舌が特徴的ですね。
この場合の第一選択薬は
・アモキシシリン(AMPC)
となります。
他の細菌(モラクセラ・カタラーリスや黄色ブドウ球菌など)が産生するβラクタマーゼによる薬効低下を考慮して、オーグメンチン®︎やクラバモックス®︎を使用する場合もあります。
リウマチ熱や急性糸球体腎炎などの合併症を予防するため、やや長めの「10日間程度」投与します。
ただし、症状のやや似ている「伝染性単核球症」の場合に誤って投与すると、高率に皮疹を生じるため注意が必要です。
ペニシリンアレルギーなどで使用できない場合は
・キノロン系薬 ・クリンダマイシン(ダラシン®︎)
などを使用することがあります。
ただし、「レボフロキサシン(クラビット®︎)」「シプロフロキサシン(シプロキサン®︎)」は溶連菌への作用に欠けるとされています。
セフェム系薬が使用される場合もありますが、この辺りはまだ議論が別れているようです。
ちなみに悪化すると「扁桃周囲膿瘍」となり窒息の危険を伴う場合があります。
この場合もアモキシシリンなどが使われますが、この段階になると専門医への紹介が必要となることが多いでしょう。
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