以前は「ピラミッド方式」といい、効果の低いNSAIDsから始め、症状の悪化に伴い、強力な抗リウマチ薬を追加・変更していました。
しかし近年では、比較的初期の段階から強力な抗リウマチ薬やステロイドを使用し、改善に従ってステロイドを漸減、抗リウマチ薬の単独使用に移行する「ステップダウンブリッジ方式」が主流となっています。
また、ある薬剤が効果なし、あるいは効果減弱(エスケープ現象)の際は漫然と継続せず、早期に他薬への変更を考慮することが推奨されています。
早期発見・早期強力治療、が大切というわけですね。
現在ではMTX(メトトレキサート)などの従来型DMARDs(csDMARDs)に加え、様々な生物学的製剤(bDMARDs)・JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬(tsDMARDs)などが開発されており、治療の幅が広がっています。
今回はそれらの使い分けについてまとめてみます。
メトトレキサート(リウマトレックス®︎)
関節リウマチ治療の基礎薬(アンカードラッグ)であり、第一選択薬。
禁忌に該当しない場合は基本的にこの薬から治療を開始します。
現在承認されている最大量は16mg/週であり、週に1回、あるいは2〜3回に分けて12時間毎に投与します。
可能なら単回にした方がコンプライアンスの確保に有利ですが、副作用防止の観点から分けて投与することも多いです。
口内炎・消化器症状・肝機能障害・血球減少・脱毛などの用量依存性副作用を防止するため、特に8mgを超えて投与する場合や副作用リスクが高い場合は葉酸(フォリアミン®︎)の投与が推奨されます。
その場合、MTXの治療効果の妨げにならないよう、24〜48時間後に投与します。
血液障害・肺障害・感染症などの兆候は要観察。
ステロイド(プレドニン®︎など)
抗リウマチ薬は一般に遅効性であるため、炎症・疼痛に応じて、比較的初期からステロイドを併用することも多いです。
関節リウマチではPSL換算で10mg/日以下の使用が多く、5mg/日以下であれば重大な感染症・精神症状は少ないとされます。
一方で長期投与に伴う骨粗鬆症などのリスクもあり、必要に応じてビスホスホネート系薬などを併用します。
サーカディアンリズムに合わせて朝や昼に使用するのが基本ですが、翌朝の症状を抑えるために朝・夕とすることもあります。
近年では有効な抗リウマチ薬が多く、経過と共にステロイドを減量できる場合も多いです。
サラゾスルファピリジン(SASP:アザルフィジン®︎EN錠)
禁忌が比較的少なく(過敏症・新生児・低出生体重児のみ)、MTXが不適な際の代替、あるいは効果不十分時の併用薬としての候補。
皮疹・消化器症状がやや起こりやすいです。
まれに重篤な皮膚症状・血液障害が起こるため注意。
皮膚や体液、コンタクトレンズがオレンジ色に着色することがあるため、説明が必要です。
妊婦にも使用できますが、葉酸の吸収を低下させることがあるため、適宜補給します。
ちなみに同成分の「サラゾピリン®」は潰瘍性大腸炎の適応です。
ブシラミン(リマチル®︎)
重篤な副作用が少ないため、比較的軽症のケース向き。
腎障害の禁忌や、皮疹の副作用などに注意。
添付文書では300mg/日ですが、リスク/ベネフィットを考慮して200mg/日以下が推奨されています。
イグラチモド(ケアラム®︎)
肝障害を抑えるため、低用量から開始するなどの注意は必要ですが、用量に注意すれば高齢者などでも比較的使用しやすい薬です。
COX-2の阻害作用などもあり、疼痛抑制効果が期待できます。一方で、消化性潰瘍の禁忌や、NSAIDsとの併用注意があります。
ワルファリンと併用禁忌です。
ミゾリビン(ブレディニン®︎)
効果・副作用は比較的 mild。
単独ではほぼ使われませんが、併用薬として利用する場合などがあります。
レフルノミド(アラバ®︎)
国内では間質性肺炎の報告がやや多かったため、あまり使用されません。
アクタリット(オークル®︎/モーバー®︎)
効果も副作用も mild。あまり使用されません。
オーラノフィン(リドーラ®︎)
古典的な関節リウマチ治療薬である金製剤。
先発品は販売中止。
タクロリムス(プログラフ®︎)
他薬と異なり、肺・肝障害は少ないため、それらに問題がある人などに。
反面、腎障害に注意。
通常の用法・用量は3mgを夕食後(高齢者は1.5mgより開始)。
生物学的製剤
<TNF阻害薬> ・インフリキシマブ(レミケード®︎点滴静注) ・エタネルセプト(エンブレル®︎皮下注) ・アダリムマブ(ヒュミラ®︎皮下注) ・ゴリムマブ(シンポニー®︎皮下注) ・セルトリズマブ ぺゴル(シムジア®︎皮下注) <IL-6阻害薬> ・トシリズマブ(アクテムラ®︎点滴静注/皮下注) <共刺激阻害薬> ・アバタセプト(オレンシア®︎点滴静注/皮下注)
csDMARDsが使用不可 or 効果不十分の際などに使用します。
投与方法(点滴・皮下注)、投与間隔(最短のエンブレル®︎で週1〜2回、最長のレミケード®︎で8週に1回)などに違いがあります。
レミケード®︎はMTXとの併用必須。ほかの薬剤も併用による上乗せ効果が期待できるものがあります。
レミケード®︎以外は自己注射可能。最近ではペン・オートインジェクション・オートクリックスといった剤形もあり、利便性が向上しています。
共通して、重症感染症(結核など)や腫瘍リスク(リンパ腫など)に注意が必要。
JAK(ヤヌスキナーゼ)阻害薬
・トファシチニブ(ゼルヤンツ®︎) ・バリシチニブ(オルミエント®︎) ・ペフィシチニブ(スマイラフ®︎) ・ウパダシチニブ(リンヴォック®︎) ・フィルゴチニブ(ジセレカ®︎)
生物学的製剤は点滴静注または皮下注ですが、これらはcsDMARDsのみで対応できない関節リウマチに対し、内服で使用可能な薬剤です。
ゼルヤンツ®︎は1日2回(肝・腎障害の程度によっては1回へ減量)、その他は1日1回。
スマイラフ®︎・ジセレカ®︎は相互作用が少ないことが特徴です。
共通して、重症感染症(結核など)や腫瘍リスク(リンパ腫など)に注意が必要。また、帯状疱疹の頻度がやや多いです。
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