私が薬局薬剤師になって戸惑ったことのひとつに、保険や公費の仕組みがあります。
とてもわかりづらい上に、正確に把握して教えてくれる人も少なく、さらに大学でもノータッチに近いのです(必修にしてもよいのではと思う笑)。
今回は処方せんに記載される項目の意味や解読方法について、まとめてみます。
保険者番号
「どの保険制度で、管轄はどこか」といった情報が記載されている部分です。
①保険者番号が6桁 →国民健康保険 ②保険者番号が8桁で39から始まる →後期高齢者医療(社会保険) ③保険者番号が8桁で67から始まる →退職者医療(国民健康保険) ④保険者番号が8桁(上記以外) →社会保険
となります。
④の例としては、02から始まれば船員、06から始まれば大企業、33から始まれば警察、などです。
ちなみにレセプトの提出先は、①②③は国民健康保険団体連合会(国保連)、④は社会保険診療報酬支払基金(支払基金)です。生保や公費単独のレセプトなども支払基金へ提出です。
各数字の意味
最初の2桁→医療保険制度 次の2桁→都道府県 次の3桁→保険者 最後の1桁→検証番号
検証番号とは、前の7桁を特定の計算式に当てはめた際にあらわれる数字のことです。保険者番号に誤りがあると計算結果と検証番号がズレるため、エラーとして検出されます。
被保険者証・被保険者手帳の記号・番号
「どの事業所の誰か」といった情報が記載されている部分です。
記号:所属する事業所に割り振られた数字です。「後期高齢者医療」では事業所という概念がないため、ここは空欄となります。
番号:事業所に勤務する個人に割り振られた数字です。扶養者がいれば同じ数字になります。
公費負担者番号・公費負担医療の受給者番号
公費医療を利用している場合はこちらに記載されています。医療保険と併用の場合は両者に記載があります。公費が2つある場合は、右下にもう一箇所、記載欄があります。
保険優先の公費医療
多くの公費は「保険優先」であり「保険で支払える分はまず保険で、残りを公費と自己負担」となります。
例えば自立支援医療(21)では
保険:自立支援:自己負担=7:2:1
となります。
公費優先の公費医療
・戦傷病者(13•14) ・原爆(18) ・感染症(29) ・心神喪失者等医療観察(30)
では「公費優先」であり、対象の薬は全額公費となります(例外あり)。
公費優先のレセプトは単独となり、例えば公費に関わる薬とそれ以外の薬が同時に処方された場合は、それぞれ別のレセプトを作成します。
公費医療の優先順位
複数の公費を利用している場合、どの順番で適用するかが定められています。
公費優先の公費医療 >保険優先の公費医療(最優先は21、最後は12) >各自治体の公費医療
とイメージしておくと、わかりやすいです。
例えば、保険・21・81(千葉県の重度心身障害者助成制度)の併用では
<21適用部分> まず保険で7割 →次に21で2割 →最後の自己負担分1割を81で <21適用外部分> まず保険で7割 →残りの自己負担分3割を81で
となります。
区分(被保険者/被扶養者)
「被保険者=本人」「被扶養者=家族」で概ね正しいですが、国保の場合は「扶養家族」という概念がないため、あまり関係ありません。レセプトもどちらで入力しても問題ないかも。
ちなみに「扶養家族の概念がない」ということは、家族全員分の保険料を支払わなければいけない(赤ちゃんですら)ため、「社保→国保」へ切り替わると保険料の増加に驚く人も。
負担割合
「処方せんへの記載事項」として定められていないため、欄内に記載されている場合もあれば、欄外に記載されている場合もあり、記載されていない場合もあります。
<0割> 「公費優先の公費医療(13•14•18•29•30)」 「保険優先の公費医療の一部(生保•特疾など)」 「各自治体の公費負担制度(子どもなど)」 を利用している場合。 <1割> 「後期高齢者(75歳以上 or 70〜74歳の一部で、 現役並み所得者に該当しない人)」や、 「保険優先の公費医療の一部(自立支援医療など)」 を利用している場合。 この場合の後期高齢者は、備考欄に「高一 or 高9」 と記載されます。「高齢者・一般」あるいは 「高齢者・9割給付」の意。 <2割>「高齢受給者(70〜74歳で、 後期高齢者や現役並み所得者に該当しない人)。 この場合も、備考欄に「高一」と 記載されます。「一」は「1割」という意味では ありませんので注意。 3割:子ども・高齢者でない一般の人や、 高齢者でも「現役並み所得者」の人など。 10割:「自費」「資格証明書」など。 「資格証明書」とは、保険料を滞納している人に 対し保険証の代わりに発行されるもので、 この場合は全額自己負担となります。 記号欄に「資」と記載されています。
また、「自賠責」「DPC算定病棟に入院中」などの場合も「10割」と記載されている場合があります。実際は合議により決定しますが、「自賠責は10割〜20割」「DPCは100%」などとする場合が多いです。
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