【薬剤師執筆】利尿薬の使い分け

薬の使い分け
音声解説はコチラ↓
耳で覚える薬の使い分け〜利尿薬〜【薬剤師・勉強】
利尿薬の使い分けを解説しています。音声のみで恐縮ですが、通勤途中や寝る前、スキマ時間の勉強に。文章をご希望の方はブログをご参照ください。利尿薬の使い分け/※2021/01/07現在の情報です。定期的に更新致しますが、最新の情報は添付文書やガイドラ...

古くから使用されており、多くの方への処方を目にする利尿薬。

一般的には「降圧目的にはチアジド」「浮腫にはループ」「K補正や臓器保護に抗アルドステロン薬」のように使われることが多いです。

今回はそれらの使い分けについて、まとめてみます。

チアジド系利尿薬

利尿作用はループ利尿薬に劣りますが、血管拡張作用などを合わせ持つとされ、降圧目的で使用されることが多いです。

他の降圧薬との合剤もいくつか販売されています。

特に塩分過多・浮腫傾向の「食塩感受性高血圧」においては、塩分と水分を同時に排泄するという作用が理にかなっています。

またこの場合、塩分の取り込みを促進するRA系が活性化していないため、RA系阻害薬の効果が薄いことからも、利尿薬が効果的とされています(ARBの使い分け参照)。

腎機能低下時(GFR:30mL/分/1.73m2未満)は腎血流量を更に減らし効果が減弱するためループ利尿薬が適。

血糖・脂質・尿酸の上昇に注意が必要。これらの副作用は用量依存的のため、チアジド系は常用量の1/2〜1/4で使われることも多いです。

トリクロルメチアジド(フルイトラン®︎)を1mg前後で使用するのが代表的でしょうか。

インダパミド(テナキシル®︎/ナトリックス®︎)は海外におけるエビデンスが豊富なことや、尿酸値上昇・光線過敏症の頻度が少ないことが特徴。

ヒドロクロロチアジドは合剤での使用が多いです。

ループ利尿薬

利尿作用に優れ、チアジドと異なり主に浮腫の改善目的で使用されます。

腎機能が低下した際はチアジドの代わりの降圧薬として使用される場合も。

代表的な3つの違いを以下に記します。

フロセミド(ラシックス®︎)

速効性があり、内服・静注ともに汎用されるループ利尿薬の代表的存在。

作用時間は短め(約6時間)で、「強く速く」効くというイメージ。

内服でのバイオアベイラビリティに個人差があるため、経過をみながら用量調節することもあります。

腎血流量を増やす作用があり、腎機能低下時にも使用可能。

薬効は用量依存的で、必要に応じて大量投与することもできます。

アゾセミド(ダイアート®︎)

フロセミドと比較し「マイルド」に「ゆっくり」効くイメージ。

急激な降圧・体液変化を起こさないため、反射性の交感神経活性化やRA系の亢進を起こしづらく、心不全予後を改善します。

トラセミド(ルプラック®︎)

利尿作用は強力ですが、抗アルドステロン作用を合わせ持つため、低カリウム血症を起こしづらいです。

また、抗アルドステロン作用により心肥大・心筋繊維化を抑制するため、心不全予後を改善します。

抗アルドステロン薬(MRB:ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)

降圧作用・利尿作用もありますが、「他の利尿薬によるカリウム低下の補正」「抗アルドステロン作用による臓器保護作用」を目的に使用されることも多いです。

分類上、セララ®︎・ミネブロ®︎もこちらに含みましたが、これらには浮腫の適応はないためご了承ください(セララ®︎は高血圧・心不全、ミネブロ®︎は高血圧)。

スピロノラクトン(アルダクトン®︎)が使用経験・エビデンスが豊富でよく使われます。

女性化乳房・生理不順といったホルモン性の副作用が問題となる場合には、アルドステロンへの選択性が高いエプレレノン(セララ®︎)が適する場合もあります。

さらにエサキセレノン(ミネブロ®︎)はエプレレノンより持続が長く、相互作用や腎障害に関する制限が緩くなっています。

また、RA系阻害薬を使用していると起こることのある「アルドステロン・ブレイクスルー(別経路でアルドステロンが生成されるようになってしまう現象)」の際にも有効です。

余談ですが、薬局薬剤師が活躍する小説「薬も過ぎれば毒となる〜薬剤師・毒島花織の名推理」にて、「マルダクトン」という薬が若い女性の「ある症状」に使用されるシーンがあります。興味のある方は一読を。笑

バソプレシンV2受容体拮抗薬

以下、トルバプタン(サムスカ®︎)について解説。

強力な利尿作用をもち、ループ利尿薬などを使用しても効果不十分な「心不全」「肝硬変」による浮腫に使用します。

電解質は排泄せず純粋に水分のみを排泄する「水利尿薬」。

使用に際しては、急激なナトリウム濃度の上昇により「浸透圧性脱髄症候群(脳の髄鞘が崩壊するという怖い症状)」をきたすおそれがあることから、必ず「入院下」で投薬を開始する必要があります。

また、「常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD・指定難病)」の治療に使う際は、調剤前に「登録医師の確認」が必要となります。

「用法が1日2回」「用量が30mg/day以上」「医療費助成制度を使用中」などから適応症が推測できるため、要確認。

ちなみに同系統の薬にモザバプタン(フィズリン®︎)があり、こちらは「抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)」が適応。

コメント

  1. […] 利尿薬 […]

  2. […] <参考> ・CCBの使い分け ・利尿薬の使い分け […]

タイトルとURLをコピーしました