【薬剤師執筆】漢方薬(下痢)の使い分け

薬の使い分け

感染症や冷え、ストレスなど、様々な要因で起こり得る下痢。漢方薬もよく利用されます。

今回はそれらの使い分けについて、まとめてみます。

急性か慢性か

下痢といっても、何らかの原因によって一時的に引き起こされたものと、もともと胃腸が弱く持続的に症状があらわれているものがあり、それによって使用する漢方薬も異なります。

急性のものに使われる漢方としては

  • 五苓散(ごれいさん)
  • 胃苓湯(いれいとう)
  • 柴苓湯(さいれいとう)
  • 半夏瀉心湯(はんげしゃしんとう)

慢性のものに使われる漢方としては

  • 小建中湯(しょうけんちゅうとう)
  • 大建中湯(だいけんちゅうとう)
  • 桂枝加芍薬湯(けいしかしゃくやくとう)
  • 人参湯(にんじんとう)
  • 真武湯(しんぶとう)

などがあります。

※一般的な場合であり、例外はあります。

五苓散&合方

五苓散は水分代謝を改善するためによく使われる漢方薬で、下痢のほかにも浮腫・頭痛・めまいなど応用範囲が広いです。冷たいものの食べ過ぎや寒さにあたったことによる下痢などに使用します。

胃苓湯は平胃散と五苓散の合方で、胃腸の働きと水分代謝の両方が悪くなった際に使用します。こちらも冷たいものによる水溶性の下痢に使用します。五苓散よりも胃腸薬としての性格が強いです。

柴苓湯は小柴胡湯と五苓散の合方で、消化器症状に加え炎症が起こっている場合に使用します。発熱(往来寒熱:熱が上がったり下がったりする)や胸脇苦満(脇腹の痛み)などがある際に適します。

半夏瀉心湯

ストレスによる下痢などに使用します。腹鳴(お腹がゴロゴロ鳴る)や心下痞鞭(みぞおちあたりのつかえ)が使用の目安となります。長期に服用することもありますが、甘草の副作用には注意。

建中湯類

「建中」とは「中(おなか)を丈夫にする」という意味があり、小建中湯や大建中湯は冷えを伴う便秘・下痢・腹痛によく使われます。

温める強さは

小建中湯 < 大建中湯

であり、特に大建中湯は漢方薬の中でも使用頻度が最多ですが、これは術後のイレウス予防にエビデンスがあることも理由です。

ちなみに黄耆建中湯は虚弱・多汗・寝汗など、当帰建中湯は主に腹痛や痔による疼痛緩和のために使用します。

桂枝加芍薬(大黄)湯

桂枝加芍薬湯は下痢型過敏性腸症候群、桂枝加芍薬大黄湯は便秘型過敏性腸症候群などに用いられます。

人参湯・真武湯

人参湯は小建中湯や大建中湯と同様、冷えによる下痢に使用しますが、腹痛はあまりなく、食後や午前に多い下痢に使用します。

冷えが強い場合には附子を加えて附子理中湯とすることもあります。

真武湯は冷えが強い虚弱者の下痢に使用するほか、人参湯と合わせて使うこともあります。

おまけ〜メンタルにも?〜

桂枝加芍薬湯と四物湯の合方である「神田橋処方」というものがあり、嫌な記憶のフラッシュバックに用いられることがあります。

似た目的で、小建中湯が使用されることもあります。

「脳腸相関」「腸は第二の脳」という言葉もあるように、腸に作用する薬がメンタルにも有効なことがあるようですね。

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