【薬剤師執筆】漢方薬(風邪)の使い分け

薬の使い分け

風邪といえば葛根湯!…というのは誰もが耳にしたことのある漢方薬ですが、実際は体質や症状、発病後の期間などによって、適する漢方に違いがあります。

今回はそれらの使い分けについて、まとめてみます。

病の初期か?病の後期か?

一般的な風邪(急性上気道炎)の経過は

【初期】寒気・発熱・頭痛
    鼻炎・咽頭痛・倦怠感
【中期】呼吸器症状(咳・痰)
    消化器症状(悪心・下痢)
【後期】倦怠感

といった流れで考えることが多いです。

初期に利用される漢方としては

  • 葛根湯(かっこんとう)
  • 桂枝湯(けいしとう)
  • 麻黄湯(まおうとう)
  • 桂麻各半湯(けいまかくはんとう)
  • 小青竜湯(しょうせいりゅうとう)
  • 麻黄附子細辛湯(まおうぶしさいしんとう)
  • 桔梗湯(ききょうとう)
  • 桔梗石膏(ききょうせっこう)
  • 銀翹散(ぎんぎょうさん:OTCのみ)

中期に利用される漢方としては

  • 小柴胡湯(しょうさいことう)
  • 柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)
  • 大柴胡湯(だいさいことう)
  • 麻杏甘石湯(まきょうかんせきとう)

後期に利用される漢方としては

  • 補中益気湯(ほちゅうえっきとう)

などがあります。

ここからは、その各製剤について解説します。

※もちろん風邪はウイルスも症状も多彩であり、この通りに進まないこともありますが、本記事ではこれに沿って解説してみたいと思います。

葛根湯・桂枝湯・麻黄湯+α

風邪の初期で利用される三大漢方です。

ともに「辛温解表剤」といわれ、未だ体表にある「邪(ウイルス)」を、発汗させることで追い出してしまおうという考えです。

発汗作用の強さは

桂枝湯 < 葛根湯 < 麻黄湯

汗の有無により使い分けるのが一般的で、有名な葛根湯は寒気がして汗が出ない時に使用するのが基本です。

比較的軽度の風邪であまり発汗させる必要がなく(あるいは既に汗が出ている)、やや体力の低い方や妊婦さんなどは桂枝湯を選択します。

麻黄湯は通常のいわゆる「風邪」よりも、インフルエンザなど強い感染症の際に使うことが多いです。

また、麻黄湯や葛根湯では発汗させ過ぎてしまうが、桂枝湯では弱過ぎるといった場合には、桂枝湯と麻黄湯を1:1で混合した桂麻各半湯が適する場合があります。

いわゆる「鼻風邪」やアレルギー性鼻炎には小青竜湯。麻黄による胃腸障害や動悸・不眠があらわれる場合には苓甘姜味辛夏仁湯を代わりに使ったりします。

麻杏甘石湯は肺が未熟な小児の咳や喘息に。

冷えの強い(陽虚)高齢者などの風邪には麻黄附子細辛湯が使われることも多いです。

柴胡剤

風邪がこじれた(長引いた)場合に使用する漢方です。柴胡桂枝湯や小柴胡湯があります。

邪が体表の奥(半表半裏)まで達し、発熱と解熱を繰り返し(往来寒熱)たり、脇腹や胃部の痛みを感じる(胸脇苦満)ことが使用の目安となります。

作用の強さとしては

柴胡桂枝湯 < 小柴胡湯

といったところで、柴胡桂枝湯は消化器症状を伴う風邪、小柴胡湯は気管支炎などに使用されます。

柴胡剤は間質性肺炎に注意が必要で、特に小柴胡湯はインターフェロンと併用禁忌です。

桔梗湯・桔梗石膏・銀翹散

喉の痛みに有効な漢方です。

桔梗湯は溶かしてうがいをしながら飲むほうが有効とされます。

炎症や喉の渇きを抑える効果は桔梗湯よりも桔梗石膏のほうが高く、桔梗石膏は葛根湯や小柴胡湯と併用されることが多いです(葛根湯加桔梗石膏or小柴胡湯加桔梗石膏)。

銀翹散はOTCとしてのみ販売されています。熱を持ったり口渇の強い咽頭痛に有効です。

補中益気湯

風邪による体力低下が長引き、倦怠感や食欲不振、寝汗などが続く場合に使用されます。

香蘇散

軽い風邪に使用されます。構成生薬が食品に近いため飲みやすく、妊婦さんにも使用しやすい漢方です。

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