【薬剤師執筆】前立腺がん治療薬の使い分け

薬の使い分け

アンドロゲン依存的に増殖し、男性のがん罹患率の上位に位置する前立腺がん。

今回はその治療薬について、まとめてみます。

病期に応じた治療法

前立腺がんは比較的進行が緩徐であり、高齢発症においては余命への影響が小さい場合もあることから、前立腺内に限局する腫瘍数が少ない症例に関しては、監視療法(経過観察)も選択肢となります。

前立腺内に限局、あるいは近くの臓器のみに及んだ症例に対する根治療法としては、前立腺全摘除術・放射線治療があります。

進行し、リンパ節転移や遠隔転移がみられる症例に対する標準治療は内分泌療法であり、さらにホルモン抵抗性となった場合などには化学療法が選択されます。

実際には高齢や合併症などで根治療法のリスクが高い場合もあるため、進行度は低くても内分泌療法を開始するなど、臨機応変に対応していくこととなります。

内分泌療法

アンドロゲンの約95%は精巣から産生されるため、精巣摘除術(外科的去勢)やLH-RHアゴニスト/アンタゴニスト(内科的去勢)によりアンドロゲンを除去することで、がんの進行を抑制することができます。

また、アンドロゲンの約5%は副腎から産生され、これは去勢単独では抑制できないため、抗アンドロゲン薬を併用したCAB(combined androgen blockade)療法が、標準的な一次内分泌療法とされています。

症状によっては、有害事象・QOL・経済性を勘案して、間欠的内分泌療法が適応されることもあります。

LH-RHアゴニスト

・リュープリン®︎(リュープロレリン)
・ゾラデックス®︎(ゴセレリン)
 ※ともに皮下注射

下垂体における受容体を継続的に刺激することによりダウンレギュレーションを起こし、LH産生を抑制します。

内科的去勢の標準薬として、古くより使用されています。

リュープリン®︎は4週に1回の通常製剤のほか、12週に1回の「SR」、24週に1回の「PRO」があります。

ゾラデックス®︎は4週に1回の通常製剤のほか、12〜13週に1回の「LA」があります。

LH-RHアンタゴニスト

・ゴナックス®︎(デガレリクス)

LH-RHアゴニストは、一過性のテストステロンサージによるフレアアップ現象(尿路閉塞・骨転移巣の増悪による骨痛・脊髄圧迫など)がみられることや、アンドロゲンが去勢レベルに低下するまでに時間がかかるなどの欠点がありました。

LH-RHアンタゴニストはそれらの欠点を改善した薬として、近年使用が広がっています。

4週または12週間隔で皮下注射します。

抗アンドロゲン薬

<非ステロイド性抗アンドロゲン薬>
・オダイン®︎(フルタミド)
・カソデックス®︎(ビカルタミド)

<ステロイド性抗アンドロゲン薬>
・プロスタール®︎(クロルマジノン)

<新規抗アンドロゲン薬>
・イクスタンジ®︎(エンザルタミド)
・アーリーダ®︎(アパルタミド)
・ニュベクオ®︎(ダロルタミド)

<アンドロゲン合成酵素(CYP17)阻害薬>
・ザイティガ®︎(アビラテロン)

標準的に使用されるのは非ステロイド性抗アンドロゲン薬です。オダイン®︎は肝障害に対する警告・禁忌や1日3回というデメリットがあることから、主としてカソデックス®︎(1日1回)が使用される傾向にあります。

ステロイド性高アンドロゲン薬は、非ステロイド性と比べ性関連の副作用がやや多いとされます。

新規抗アンドロゲン薬は、一次内分泌療法に抵抗を示すようになった「去勢抵抗性前立腺がん」に対し使用されます。

アンドロゲン合成酵素(CYP17)阻害薬であるザイティガ®︎は、同じく去勢抵抗性前立腺がん、あるいは内分泌療法未治療のハイリスク症例に使用されます。CYP17の阻害によりコルチゾールが減少し、フィードバック作用により鉱質コルチコイド過剰症状があらわれるため、ステロイドの併用が必要です。空腹時投与(食前1時間〜食後2時間を避ける)であることにも注意。

<ザイティガ®︎服用時のステロイド補充>
CYP17阻害 →  コルチゾール↓
      →  ACTH↑
      →  鉱質コルチコイド↑
      (体液貯留・高血圧・K↓)

国内臨床試験においては
・転移性去勢抵抗性前立腺がん
 →プレドニゾロン 1回5mg
  1日2回 朝・昼食後
・内分泌療法未治療のハイリスク症例
 →プレドニゾロン 1回5mg
  1日1回 朝食後
で併用されているため、これを参考にします。

化学療法

主にタキサン系が使用されます。

標準的にはタキソテール®︎(ドセタキセル)、セカンドラインとしてジェブタナ®︎(カバジタキセル)が選択肢となります。

好中球減少症・間質性肺炎・末梢神経障害などに注意。

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