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上気道症状に加え発熱・関節痛などの全身症状、悪化すると肺炎・脳炎につながるおそれもあるインフルエンザ。
今回はその治療薬について、まとめてみます。
タミフル®︎(オセルタミビル)
使用経験が多く、汎用される抗インフルエンザ薬のひとつ。
内服薬(カプセル・ドライシロップ)であり、吸入に比べ確実性が高いです。
耐性株の出現が報告されており、後述のラピアクタ®︎と交差耐性を示します。リレンザ®︎・イナビル®︎は耐性の懸念が少ないとされています。
異常行動との関連が議論されていましたが、治療の有無・処方内容に関わらず異常行動の発現はみられることから、抗インフルエンザ薬との因果関係は否定されています。
予防と治療、小児と腎機能障害患者のそれぞれで細かく用量設定がされています。
添付文書と日本透析医会・日本透析医学会ガイドラインに記載されている用法・用量をまとめると以下のようになります。
治療 | 予防 | |
成人 | 75mg/回 1日2回 5日間 | 75mg/回 1日1回 7〜10日間 |
幼小児(1歳以上) | 2mg/kg/回 1日2回 5日間 | 2mg/kg/回 1日1回 10日間 |
新生児・乳児(1歳未満) | 3mg/kg/回 1日2回 5日間 | 設定なし |
10<Ccr≦30 | 75mg/回 1日1回 | 75mg/回 隔日 または30mg/回 1日1回 |
透析患者 | 発症時1カプセル(75mg)単回投与、5日後症状が残っていた場合には再投与 | 1カプセル(75mg)単回投与、 5日後に再投与 |
<注意> ・小児における1回最高用量は75mg ・Ccr≦10で透析未導入の末期腎不全の症例への 推奨用量は確立していない ・海外では30mgカプセルがあり、 透析患者において別の用法・用量が設定されている
イナビル®︎(ラニナミビル)
「単回投与」「耐性株の報告がない」などの利点から、吸入が可能な症例でよく使用されます。
治療・予防ともに、成人または10歳以上の小児では2容器、10歳未満の小児では1容器を単回投与です(予防では1容器ずつ2日に分けても可)。
ネブライザー用の製剤もあり。
リレンザ®︎(ザナミビル)
世界初のノイラミニダーゼ阻害薬。
同じ吸入薬としては、単回投与で済むイナビル®︎のほうが人気ですが、「罹病中であるという意識づけができる」「吸入失敗した時の無駄が少ない」など、5日間投与であることのメリットもあります。
成人・小児ともに用法・用量は以下の通りです。
・治療:1回2ブリスター 1日2回 5日間 ・予防:1回2ブリスター 1日1回 10日間
ラピアクタ®︎(ペラミビル)
重症例、内服・吸入不能例などに対し、主に単回点滴静注で使用されます。
タミフル®︎との交差耐性に注意が必要です。
ゾフルーザ®︎(バロキサビル)
上記4種は「ノイラミニダーゼ阻害薬」というカテゴリーでしたが、こちらはCap依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬と、異なる作用機序をもつ抗インフルエンザ薬。
「単回内服投与でよい」という利便性から、発売当初は比較的多くの処方が行われていました。
現在では、高率に耐性株が存在するという報告がなされ、安易な使用は控えられる傾向にあります(特に12歳未満では感受性低下株が多いとのこと)。
用量は年齢・体重によって決まり、以下のようになります。
体重80kg以上 | 80mg |
成人・12歳以上の小児・12歳未満で40kg以上 | 40mg |
20kg以上40kg未満 | 20mg |
10kg以上20kg未満 | 10mg |
アビガン®︎(ファビピラビル)
「新型または再興型インフルエンザウイルス感染症」が適応。
パンデミックの際、国の判断で使用されます。
シンメトレル®︎(アマンタジン)
ウイルスの脱殻を阻止し、増殖を抑える作用があります。
A型インフルエンザの適応がありますが、これに対して使用することはあまりないと思われます。
麻黄湯
エビデンスレベルは高いとはいえませんが、「麻黄湯」の服用により、発熱・頭痛・筋肉痛・咳・倦怠感が抗インフルエンザ薬と同レベルに軽減し、関節痛の改善に関してはタミフルを上回ったという報告があります。
西洋薬が使用できない際の選択肢となる可能性があります。
インフルエンザ脳症とライ症候群
違いのわかりにくい症状ですが、インフルエンザ脳症はインフルエンザの「合併症」であり、NSAIDsにより発症・重症化リスクが増加します。
ライ症候群はNSAIDsの「副作用」であり、インフルエンザ患者に使用することでリスクが高まります。
この「合併症」「副作用」2つのリスク上昇を避けるため、インフルエンザ罹患時はNSAIDsは原則として使用しません(特に小児)。
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