【薬剤師執筆】肺がん治療薬の使い分け

薬の使い分け

がんの中でも罹患率や死亡率が高く、喫煙や遺伝子変異の影響が大きい肺がん。

今回はその治療薬について、まとめてみます。

肺がんの種類

肺がんはまず「非小細胞がん」「小細胞がん」にわけられ、

非小細胞がんは「非扁平上皮がん」「扁平上皮がん」にわけられ、

非扁平上皮がんは「腺がん」「大細胞がん」などにわけられます。

治療方針は「小細胞がん」「非扁平上皮がん(腺がん・大細胞がん)」「扁平上皮がん」の3つでそれぞれ異なります。

最多は腺がんであり、治療薬の種類も多いです。

・悪性の小細胞がん
・喫煙男性に多い扁平上皮がん
・最多の腺がん
・低頻度の大細胞がん

などと覚えておくとよいでしょう。

小細胞肺がんの化学療法

小細胞肺がんは初期であっても微小な遠隔転移を起こしていることが多く、手術や放射線治療のみではコントロールが困難なため、全病期において化学療法を行います。

一般のTNM分類(ステージ0〜Ⅳ)はあまり使用せず「Ⅰ期」「限局型」「進展型」といった分類をします。

Ⅰ期の標準治療は、手術+「シスプラチン+エトポシド(CDDP/VP-16)」です。

限局型の標準治療は、放射線+「PE療法(シスプラチン+エトポシド:CDDP/VP-16)」です。

進展型の標準治療は、化学療法単独で「IP療法(シスプラチン+イリノテカン:CDDP/CPT-11)」または「PE療法」です。

進展型に対しては近年、免疫チェックポイント阻害薬である「テセントリク®︎」「イミフィンジ®︎」が承認され、プラチナ系抗がん剤+エトポシドとの併用にて使用可能となりました。

腎機能障害などでシスプラチンに対する忍容性が低い場合は、カルボプラチンに変更することも考慮します。

非小細胞肺がん

術後補助化学療法

手術適応となる非小細胞肺がんはステージⅠ・Ⅱ・ⅢAです。

術後補助化学療法としては

・UFT(ユーエフティ®︎)単独(ⅠA・ⅠB・ⅡA)
・プラチナ併用療法(Ⅱ〜ⅢA)

があり、プラチナ(シスプラチン or カルボプラチン)と併用するものとしては「ビノレルビン」「ペメトレキセド」「パクリタキセル」などがあります。

UFTは2年間の投与が一般的です。

ペメトレキセドは非扁平上皮がんで有効性が高いといわれています。

切除不能例(非扁平上皮)の化学療法

肺がんには原因となる遺伝子変異が多数特定されており、変異が陽性の際は、そこをターゲットにした薬剤を使用します。

EGFR遺伝子変異陽性(最多)
→「イレッサ®︎」「タルセバ®︎」「ジオトリフ®︎」
 「タグリッソ®︎」「ビジンプロ®︎」
ALK融合遺伝子陽性
→「ザーコリ®︎」「アレセンサ®︎」
 「ジカディア®︎」「ローブレナ®︎」
ROS1融合遺伝子陽性
→「ザーコリ®︎」「ロズリートレク®︎」
BRAF遺伝子変異陽性
→「タフィンラー®︎+メキニスト®︎」
PD-L1陽性
→「キイトルーダ®︎」
METex14変異陽性
→「テプミトコ®︎」「タブレクタ®︎」

といった形です。

免疫チェックポイント阻害薬であるキイトルーダ®︎以外は内服です。

すべて陰性の場合は「プラチナ製剤」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」などを組み合わせて治療します。

切除不能例(扁平上皮)の化学療法

扁平上皮がんの場合は使用する薬が異なります。

以前はプラチナ併用療法が主でしたが、近年では免疫チェックポイント阻害薬である「キイトルーダ®︎」が使用できるようになりました。他に「ポートラーザ®︎」があります。

主に注射での使用になります。

副作用対策

シスプラチンは高度催吐性リスク薬にあたるため、急性・遅発性に「アプレピタント」「5-HT3受容体拮抗薬」「デキサメタゾン」、突出性嘔吐に「D2受容体遮断薬」「オランザピン」、予期性嘔吐に「ロラゼパム」などが使用されます。

また、シスプラチンによる腎機能障害を軽減するため「フロセミド」などが使用されます。

エトポシドは脱毛の頻度が高いため、外見的・心理的なケアも大切です。

イリノテカンは下痢が問題となりやすいです。初期にはコリン作動性作用が問題となるため「抗コリン薬」など、その後は「ロペラミド」や、活性代謝物の腸管循環による滞留を防ぐ意図で「半夏瀉心湯」などが使用されます。同じく活性代謝物を早期に排出するため、あえて「センノシド」を使用する場合もあります。

ペメトレキセドは葉酸代謝拮抗薬であり、血液障害・消化器障害の予防のため、投与7日前より「調剤用パンビタン末(葉酸を含む総合ビタミン剤)」を連日内服、9週間ごとにビタミンB12注射を使用します。

パクリタキセルは「脱毛」「末梢神経障害」「関節痛/筋肉痛」などが起こることがあり、末梢神経障害には「牛車腎気丸」、関節痛/筋肉痛には「芍薬甘草湯」などが使用されます。

分子標的薬は「間質性肺炎」「肝機能障害」に注意なほか、食事の影響を受けるものもあります。

免疫チェックポイント阻害薬は「間質性肺炎」「肝機能障害」「1型糖尿病」「内分泌異常」などに注意が必要です。

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