【薬剤師執筆】炎症性腸疾患治療薬の使い分け

薬の使い分け
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代表的な指定難病のひとつである炎症性腸疾患(IBD)。

  • 潰瘍性大腸炎(UC)
  • クローン病(CD)

の2つが主なものとなります。

今回はそれらの治療薬の使い分けについて、まとめてみます。

5-ASA製剤

5-ASAは5-アミノサリチル酸(メサラジン)であり、炎症性腸疾患における標準薬です。

サラゾスルファピリジン(SASP)も代謝されスルファピリジンとメサラジンに変換されるため、ここに含みます。

寛解導入時は最大用量で使用し、寛解維持には用量を落とします。

サラゾピリン®︎

最も古くからある5-ASA製剤。

大腸の腸内細菌により代謝されて薬効を発揮するため、効果発現部位は主に大腸となります。

そのため、クローン病の小腸病変には不適で、その際は下記のペンタサ®︎が使用されます。

代謝後のスルファピリジンは肝臓でアセチル化され毒性が軽減しますが、10%程度の方が slow acetylator であるといわれ、皮膚症状・消化器症状・血液障害などの副作用が出やすいとの報告があります。そのため現在では、ペンタサ®︎以降の5-ASA製剤が第一選択薬です。

皮膚や体液がオレンジ色に着色することがあるので説明を。

ちなみに同成分の腸溶錠である「アザルフィジン®︎EN」の適応は「関節リウマチ」。

ペンタサ®︎

サラゾピリン®︎の分解産物である5-ASA単独で製剤化し、スルファピリジンによる副作用をなくした初めての薬。

小腸〜大腸にかけて徐々に薬物を放出するため、クローン病の小腸病変に対しても有効です。

反面、潰瘍性大腸炎で大腸への薬剤暴露量を増加させたい時は他剤の方が適する場合もあります。

アサコール®︎

適応は「潰瘍性大腸炎」のみ。

pHが7以上となる回腸以降(=主に大腸)で5-ASAを放出するよう設計された製剤です。

大腸病変への有効性が高いです。

リアルダ®︎

適応は「潰瘍性大腸炎」のみ。

「ペンタサ®︎」「アサコール®︎」は寛解期を除き「1日3回」ですが、この薬は「1日1回」です。

また、最大投与量は4,800mgと最も多いです。5-ASA製剤は暴露量と有効性が比例するため、より高い効果が期待できるかもしれません。

大腸全域へ作用します。

冷所保存。

坐剤・注腸

直腸病変には坐剤、左側大腸炎型には注腸を使用することがあります。

「サラゾピリン®︎坐剤」「ペンタサ®︎坐剤」「ペンタサ®︎注腸」など。

注腸製剤は注入後の体位変換を指導。

ステロイド

潰瘍性大腸炎の寛解導入において5-ASA製剤で効果不十分な際、また活動期クローン病においては第一選択として使用します。

長期投与による副作用予防の観点から、原則として「寛解導入」で使用し、「寛解維持」では他剤を使用します。

炎症性腸疾患特有の製剤としては、回腸〜大腸をターゲットとした「ゼンタコート®︎」(適応はクローン病のみ)や、「リンデロン®︎坐剤」「プレドネマ®︎注腸」「ステロネマ®︎注腸」「レクタブル®︎注腸フォーム」などの局所製剤があります。

免疫調節薬

ステロイド依存例に使用しステロイドを減量しやすくしたり、難治例の寛解維持などに使用します。

「イムラン®︎(アザチオプリン)」「ロイケリン®︎(メルカプトプリン:6-MP)」があります。ロイケリン®︎は適応外です。

キサンチンオキシダーゼ阻害薬との相互作用に注意。特に「フェブキソスタット」「トピロキソスタット」は禁忌です。

免疫抑制薬

難治例・ステロイド抵抗例の寛解導入に使用します。

内服では「プログラフ®︎(タクロリムス)」があります。

「血中トラフ濃度を測定し用量調節する」「カプセル剤のみを使い0.5mg刻みとする」「通常3ヵ月までの投与とする」などの但し書きあり。

重症・劇症ではシクロスポリンの持続点滴静注も行われることがあります。

生物学的製剤

<薬剤例>
・レミケード®︎
・ヒュミラ®︎
・シンポニー®︎
・ステラーラ®︎
・ゼルヤンツ®︎
・エンタイビオ®︎

難治例などに使用されることがあります。

「ヒュミラ®︎」「シンポニー®︎」は自己注射可能です。

「ゼルヤンツ®︎」は内服です。

「肺炎」「敗血症」「結核」などの重篤な感染症に注意。

経腸栄養剤

クローン病の場合は、5-ASA製剤とともに栄養療法が第一選択となります。消化器を休ませ、負担を減らす目的です。

成分栄養剤である「エレンタール®︎」、消化態栄養剤である「ツインライン®︎」を使用します。

<参考>
・経腸栄養剤の使い分け

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