【薬剤師執筆】妊娠中の時系列注意点と注意すべき薬剤

医学・薬学

妊娠は経験してみないとわからないことも多く、初めての妊婦さん・直接経験できない男性・専門外の医療従事者などには難しい領域です。

今回はそういった方向けに、なるべく時系列の注意点と、薬剤師らしく薬に関することなどをまとめてみます。

やや専門的かもしれないのは、お許しを。笑

※妊娠はひとりひとりによって状況が大きく異なります。ここでは一般的な解説をしますが、詳しくは主治医の先生に相談してくださいね。

全体を通して

回避するべき要素

催奇形因子は「母子感染」「一部の薬剤」「放射線」「高血糖」「アルコール」「タバコ」です。薬の注意点は最後に記載します。

妊娠初期の風疹感染により、胎児に「先天性風疹症候群」のリスクがあります。抗体検査が陰性の場合は、妊娠前のワクチン接種が推奨されます。

妊娠中のサイトメガロウイルス感染により胎児に神経障害が起こる可能性があります。乳幼児からの感染が多いため、小さい子が口にしたものなどには気をつけましょう。

生肉や加熱不十分の肉、猫の糞などとの接触による「トキソプラズマ症」や、性行為感染による「新生児ヘルペス感染」「先天性梅毒」にも注意。

妊娠中の体の変化

最終的な体重の増加は+7〜12kgが目安です。特に妊娠末期は、体重変化のこまめなチェックが大切です。

血圧に関しては、血液量・心拍出量は上昇するものの、プロゲステロンに血圧を下げる作用があるため、実際は不変か、やや低下します。

プロゲステロンや子宮増大の影響で消化管運動が低下し、便秘や逆流性食道炎になることがあります。便秘に対しては、酸化マグネシウムをはじめとした便秘薬もよく処方されます。逆流性食道炎の予防には、過食・早食いを避ける、食後すぐ横にならない、などが大切です。

プロゲステロンによる尿停滞により膀胱炎、悪化すると腎盂腎炎を起こす可能性があります。胎児に影響のない抗菌薬で対応します。

プロゲステロンって色んな作用があるのね。笑

栄養管理

肥満や妊娠中の過剰な体重増加は「妊娠高血圧症候群」「妊娠糖尿病」「新生児仮死」などのリスクがあります。

ちなみに妊娠高血圧症候群は『アンサングシンデレラ1話』で問題となった「HELLP症候群」「子癇(けいれん)」からの帝王切開などに繋がるため、注意。

逆にやせ過ぎは「低出生体重児」「将来の生活習慣病」のリスクがあります。

妊娠初期は胎児への栄養はさほど接種する必要はなく、つわりの影響もあるため、無理せず食べられる範囲で食べることが大切です。

妊娠中期となり、つわりが治まると、食欲が増進しやすいです。この時期は胎児の成長のため体が自然に求めるのでしょう。血液中に酸素を運ぶ「鉄分」や骨をつくる「カルシウム」、筋肉合成のための「タンパク質」などを意識して摂取しましょう。

妊娠後期は胃が圧迫されるため、少量をこまめに食べることが大切です。成長が急速に進むためバランスのよい食事を。

葉酸は不足すると「二分脊椎」などの先天奇形のリスクがあり、妊娠計画時からの摂取が大切です。目安は400μg/日であり、サプリを利用すると簡単です。

ビタミンDは紫外線により活性化され、カルシウムの吸収アップ、免疫力アップに大切です。日光は「幸せホルモン:セロトニン」や「睡眠ホルモン:メラトニン」の分泌も促すため、特に朝の日光浴なども重要です。

逆に注意が必要なものとして「ビタミンA」があり、妊娠3ヶ月までの過剰摂取で「水頭症」「催奇形」のリスクがあります。うなぎやレバーを頻繁に食べる人は少ないと思いますが、サプリなどは含有量に注意が必要です(上限1,500μg/日)。

時系列

妊娠前

葉酸摂取推奨。

必要に応じて風疹ワクチン接種推奨。

排卵日検査薬は次の生理予定日17日前から使用します。

妊娠初期(器官形成などの重要期)

0週〜3週

最終月経開始日を「満0日」とします。

約14日で排卵・受精し、その後6日程で着床します。

4週〜7週

超音波検査で胎嚢(4週中頃)や心拍動(5週後半)が確認されるようになってきます。一般に、この辺りで初診となります。

妊娠反応が陽性になるのが4週以降のため、妊娠検査薬は5週目以降を推奨。

つわり開始(5〜6週頃から)。早朝など空腹時に起こりやすいため、枕元に軽食を置いておく、適度に間食をする、などが有効です。基本は「食べたいものを食べたい時に」。安静や気分転換も大切です。

つわりがひどくなると妊娠悪阻となります。心理的ストレスが発症に関係するため、適度に発散を。

絶対過敏期といい、奇形のリスクが最も高い時期です。上記の催奇形因子は避けましょう。

8週〜11週

性差決定(確認できるのはまだ)。

予定日確認。

相対過敏期といい、重要な器官の形成は終わっていますが、外性器の分化・口蓋形成などは続いています。上記の催奇形因子は避けましょう。

流産はこの頃までに起こることが多く、8割以上が赤ちゃん側の原因といわれています(ここまでを早期流産)。

葉酸はこの頃まで摂取推奨。

12週〜15週

この頃につわり消失。

ここから22週までが後期流産。切迫流産であれば妊娠継続の可能性あり。下腹部痛・腹部膨満感・性器出血に注意し、診断されたら安静を。

妊娠中期(安定期)

16週〜19週

超音波検査で性差がわかるようになる(17〜18週)。

子宮増大により胃や肺が圧迫され、動悸・息切れを感じることも。

超音波検査で形態異常の確認。

20週〜23週

胎動を感じ始める(個人差が大きい)。

妊娠高血圧症候群・妊娠糖尿病のリスクが出てくる。原因は様々だが、肥満や食べづわりによる過食などに注意。

22週〜37週の分娩が早産。やせ・喫煙・ストレスなどがリスクとなります。切迫早産の場合は必要に応じて「張り止め薬」を使用します。

24週〜27週

前置胎盤(胎盤が正常より下になり子宮口を塞ぐ)の診断。確定診断は31週まで。痛みのない出血が初期症状。診断されたら37週末までに予定帝王切開。

赤ちゃんの体重は27週末で約1,000g。

妊娠後期(外で生活するための準備期)

28種〜31週

30週前後で羊水量がピークとなります。過多(800mL超)、過小(100mL未満)の場合は必要に応じて治療します。過多の場合は子宮増大・体重増加・腹部膨満感などが起こります。

赤ちゃんの体重は31週末で約1,500g。

32週〜35週

肺の機能が完成し、NICU管理がなくても外で生活できるようになります。

血液量が最大となり、相対的に鉄が不足し貧血になりやすいです。必要に応じて鉄剤を内服します。

赤ちゃんの体重は35週末で約2,000g。

36週〜39週

すべての器官が完成。

少量の粘液性の出血である「産徴(おしるし)」がみられることがある。ない場合もあり、あってもすぐに出産開始というわけではなく、個人差があります。

赤ちゃんの体重は39週末で約3,000g。

40週0日

出産!

注意が必要な薬剤

催奇形性について、信頼度の高いエビデンスのあるものを記載します。可能性という点では他にもあるため、担当の医師・薬剤師に必ず確認を。

「ビタミンA」

「レベトール®︎(リバビリン)」

「メルカゾール®︎(チアマゾール)」

「カプトリル®︎(カプトプリル)」

「ニューロタン®︎(ロサルタン)」

「メバロチン®︎(プラバスタチン)」

「ワーファリン®︎(ワルファリン)」

「リーマス®︎(リチウム)」

「テグレトール®︎(カルバマゼピン)」

「デパケン®︎/セレニカ®︎/バレリン®︎(バルプロ酸)」

妊娠後期(5ヶ月以降)は催奇形リスクは減少しますが、「胎児毒性」があります。「鎮痛薬(NSAIDs)」「糖尿病薬」「降圧薬」「ワルファリン」などに注意。

市販薬だと、例えば妊娠後期に痛み止めを自己判断で使用しないよう注意。外用もNG。アセトアミノフェンやサリチル酸メチル(サロンパス®︎)は使用可。

参考文献

病気がみえる vol.10

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