過去にはがん死亡率の第一位を占めていた胃がん。
現在では、塩漬けの減少による塩分摂取量の減少、ピロリ菌除菌の普及、検診・治療の進歩などにより、罹患率・死亡率ともに減少傾向です。
今回は主に薬局(外来)で使用する治療薬について、まとめてみます。
各レジメンの特徴
可能であれば手術・切除を選択しますが、切除不能進行・再発胃がんの場合は薬物治療を行います。
様々なレジメンがありますが、エビデンスレベルが高く使用頻度が高いものを記載します。
一次治療(1st line)
まず考慮されるのが、エビデンスレベルAの「SP療法」「XP療法」です。エビデンスレベルBですが「SOX療法」もあります。HER2過剰発現症例に対しては「トラスツズマブ(ハーセプチン®︎)」をこれらに併用します(Day 1)。
SP療法(S-1+シスプラチン)
S-1を3週内服・2週休薬 8日目にシスプラチン点滴
というレジメンです。
トラスツズマブ併用時はシスプラチンも1日目に変更します。
薬局においては「ティーエスワン®︎」を体表面積に応じて「1回40mg〜75mg」「1日2回」で使用します。
シスプラチンの催吐性・腎障害に特に注意が必要です(以下「副作用対策」参照)。
XP療法(カペシタビン+シスプラチン)
カペシタビンを2週内服・1週休薬 1日目にシスプラチン点滴
というレジメンです。
薬局においては「ゼローダ®︎」を体表面積に応じて「1回1200mg〜2100mg(4T〜7T)」「1日2回」で使用します。
SP療法に比べ、下痢などの消化器症状が抑えられる可能性があります。反面、カペシタビンによる手足症候群に注意(以下「副作用対策」参照)。
SOX療法(S-1+オキサリプラチン)
S-1を2週内服・1週休薬 1日目にオキサリプラチン点滴
というレジメンです。
シスプラチンの催吐性・腎障害を軽減することができます。反面、オキサリプラチンによる末梢神経障害に注意(以下「副作用対策」参照)。
二次治療(2nd line)
一次治療に抵抗性を示す場合には「パクリタキセル+ラムシルマブ(サイラムザ®︎)」などによる二次治療が考慮されます。
ともに点滴で直接薬局では扱わないため詳細は割愛しますが、特徴的な副作用として、ラムシルマブによる鼻出血や高血圧、パクリタキセルによる末梢神経障害などがあります。
三次治療(3rd line)
上記まででも効果不十分の場合は「ニボルマブ(オプジーボ®︎)」などによる三次治療が考慮されます。
点滴で直接薬局では扱わないため詳細は割愛しますが、間質性肺炎、筋・神経障害、各種臓器障害によるホルモン異常などに注意が必要です。
術後補助化学療法
治癒切除後の再発予防としては
S-1を4週内服・2週休薬 1年間
が標準治療となっています。概ね術後6週以内に開始します。
薬局においては「ティーエスワン®︎」を体表面積に応じて「1回40mg〜75mg」「1日2回」で使用します。
服薬完遂と予定服薬総量の70%以上の服薬が重要であると報告されているため、アドヒアランスの確認が必須です。
消化器症状(食欲不振・吐き気・下痢など)や好中球減少・肝障害をモニタリングし、必要に応じて減量や投与間隔を2投1休にするなどの対応も行います。
副作用対策
シスプラチンは高度催吐性リスク薬、オキサリプラチンは中等度催吐性リスク薬にあたるため
・イメンド®︎・デカドロン®︎・ナウゼリン®︎ ・ノバミン®︎・ワイパックス®︎
などが使われることがあります。
シスプラチンによる腎障害予防としては、フロセミド(ラシックス®︎)などの利尿薬が使われることがあります。
カペシタビンによる手足症候群に対しては、保湿剤(ヒルドイド®︎)やステロイドが使われることがあります。
オキサリプラチンによる末梢神経障害のため、
・メチコバール®︎・リリカ®︎・サインバルタ®︎
などが使われることがあります。
トラスツズマブは心不全の発現頻度がやや高いため、息切れ・浮腫みなどがないか観察が必要です。
下痢に対しては、整腸剤各種やロペラミド(ロペミン®︎)などが使われることがあります。
好中球減少については、抗菌薬を事前に処方しておき、発熱時に内服するよう指示されることがあります。
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