音声解説はコチラ↓耳で覚える薬の使い分け〜抗うつ薬〜【薬剤師・勉強】抗うつ薬の使い分けを解説しています。音声のみで恐縮ですが、通勤途中や寝る前、スキマ時間の勉強に。文章をご希望の方はブログをご参照ください。抗うつ薬の使い分け/※2021/04/03現在の情報です。定期的に更新致しますが、最新の情報は添付文書やガイ...
抗うつ薬には「睡眠改善作用」「疼痛抑制作用」などの副次効果のあるものや、「意欲亢進系」「鎮静系」などといった特徴の違いもあります。
今回はそれらの使い分けについて、まとめてみます。
三環系抗うつ薬(TCA)
抗コリン作用や循環器系への影響から、現在は第一選択薬として使用されることは少なくなりましたが、抗うつ効果は比較的高い系統です。
ここでは代表的な数種類について解説します。
イミプラミン(トフラニール®︎)
TCAの標準薬。
抗うつ薬の作用を比較する際、「イミプラミン換算」としてこの薬を基準にします。
クロミプラミン(アナフラニール®︎)
抗うつ薬で唯一、注射剤が販売されているため、拒薬や混迷で内服不能な入院患者にも使用できます。
アミトリプチリン(トリプタノール®︎)
抗うつ作用・鎮静作用・副作用、それぞれ高く、不安・焦燥や自殺念慮が強い場合などに。
夜尿症・神経障害性疼痛にも適応あり。
アモキサピン(アモキサン®︎)
第二世代とよばれるTCAで、抗コリン作用などが弱くなっています。
俗にいう「アッパー系」で、効果発現が早く数日で反応する場合もあります。
ドパミン遮断作用があり、精神病性うつ病に効果が期待できる反面、高齢者などでは錐体外路症状に注意。
四環系抗うつ薬
抗うつ作用は mild であり、現在は眠気の副作用を利用して就寝前に投与することが多いです。
この意味では「ミアンセリン(テトラミド®︎)」「セチプチリン(テシプール®︎)」などが適します。
「マプロチリン(ルジオミール®︎)」は作用機序が異なり(主にノルアドレナリンの再取り込み阻害)、意欲亢進作用があります。
トラゾドン(デジレル®︎/レスリン®︎)
SARI(Serotonin 2A Antagonist/Reuptake Inhibitor)であり、5-HT2A遮断作用による睡眠改善効果を期待して使用することが多いです。
この場合は25mg〜100mg程度で用いられます。
抗うつ作用は低め。
SSRI
主にセロトニン濃度を高める、新規抗うつ薬の代表薬。
フルボキサミン(デプロメール®︎/ルボックス®︎)
わが国で初めに販売されたSSRI。
CYP1A2の強力な阻害薬。「テルネリン®︎」「ロゼレム®︎」などは病態的に併用することも多いため注意。
パロキセチン(パキシル®︎)
新規抗うつ薬の中でも、効果・副作用が強めと捉えられることが多いです。
自身の代謝酵素であるCYP2D6を自ら阻害するため、血中濃度推移が投与量に正比例せず(非線形)、急激な変化を起こしやすい薬です。
そのため副作用や離脱症状を起こしやすく、現在ではそれを踏まえて5mg錠や徐放錠(CR)が利用されます。
またCYP2D6の阻害により「タモキシフェン(ノルバデックス®︎)」の活性化を阻害するため、乳がんの死亡率を上げるという報告もあります。禁忌ではありませんが注意が必要です。
セルトラリン(ジェイゾロフト®︎)
有効性・忍容性ともに高く使用しやすい薬です。
アメリカでは月経前気分不快症にも使われます。
抗うつ薬としては珍しく下痢の副作用がややみられます。
エスシタロプラム(レクサプロ®︎)
有効性・忍容性ともに高く使用しやすい薬です。
また、初めから維持量の10mgで使用できます(少量から漸増の必要がない)。
他のSSRIはノルアドレナリン・ドパミンにもやや作用しますが、この薬はセロトニンへの選択性が特に高いです。
QT延長の副作用や、CYP2C19のPMでは血中濃度が上昇することに注意。
SNRI
セロトニンだけでなくノルアドレナリンの濃度も上げるため、理論的には意欲亢進作用に期待できる薬です。
ミルナシプラン(トレドミン®︎)
効果は mild ですが副作用・相互作用が少なく、高齢者にも使用しやすい薬です。
尿閉にやや注意。
デュロキセチン(サインバルタ®︎)
ミルナシプランより作用が強く、下記疾患に伴う疼痛の適応もあり、幅広い診療科で使用されます。
・糖尿病性神経障害 ・線維筋痛症 ・慢性腰痛症 ・変形性関節症
吐き気などの消化器症状、不眠などに注意。
ベンラファキシン(イフェクサー®︎)
有効性が高く、海外と同用量まで使用できるため、効果不十分な際の対応力に優れます。
低用量でSSRI的、高用量でSNRI的に作用します。
NaSSA
ミルタザピン(リフレックス®︎)
有効性が高く、副次効果に優れます。
H1遮断により「睡眠の量(時間)を改善」、5-HT2A遮断により「睡眠の質(深さ)を改善」、5-HT2C遮断により「食欲不振を改善」します。
過眠・過食をともなう非定型うつ病には向きませんが、不眠・食欲不振をともなう典型的なうつ病に有効です。
投与初期は翌日の眠気がやや強く出ることがありますが、数日継続すると改善する場合もあります。
ボルチオキセチン(トリンテリックス®︎)
セロトニン再取り込み阻害は比較的弱めですが、その他に5-HT1Aの刺激など種々の作用を合わせ持ち、抗うつ作用を発揮します。
有効性・忍容性が高く、離脱症状も少ないことから、期待がもたれています。
抗うつ薬間の比較解析
医学雑誌「Lancet」では、抗うつ薬間の有効性・忍容性を比較したメタ解析の結果が掲載されたことがあります。
2018年に掲載された Cipriani らの論文や2009年の MANGA study が有名で、それらをまとめると以下のような結果になります。
<有効性が高い薬剤> ・ボルチオキセチン(トリンテリックス®︎) ・エスシタロプラム(レクサプロ®︎) ・ミルタザピン(リフレックス®︎) ・アミトリプチリン(トリプタノール®︎) ・パロキセチン(パキシル®︎) ・ベンラファキシン(イフェクサー®︎)
<忍容性が高い薬剤> ・ボルチオキセチン(トリンテリックス®︎) ・エスシタロプラム(レクサプロ®︎) ・セルトラリン(ジェイゾロフト®︎)
この結果がすべてではありませんが、トリンテリックス®︎・レクサプロ®︎は、有効性・忍容性ともに優れているともいえます。
副作用について
吐き気に関しては「モサプリド(ガスモチン®︎)」などが併用されることがあります。吐き気は一般に服用初期のみなため、驚いて抗うつ薬を中止しないよう指導が必要です。
SSRIなどによりセロトニン濃度が上昇し、5-HT2Aが刺激されると不眠の副作用があらわれることがあります。この場合は5-HT2A遮断作用をもつトラゾドン・ミルタザピンなどが有効な場合があります。
同様に5-HT2Cが刺激されると性機能障害の副作用があらわれることがあります。この場合は5-HT2C遮断作用をもつミアンセリン・ミルタザピンなどが有効な場合があります。
ミルタザピンなど鎮静系の抗うつ薬による眠気は、SSRIやSNRIへの変更により改善する場合があります。
同様にミルタザピンによる過食・体重増加(H1・5-HT2C遮断)も、SSRIやSNRIへの変更により改善する場合があります。
コメント
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[…] 【薬剤師執筆】抗うつ薬の使い分け | こころセルフ […]
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