【薬剤師執筆】疥癬・原虫・寄生虫治療薬の使い分け

薬の使い分け
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耳で覚える薬の使い分け〜疥癬・原虫・寄生虫治療薬〜【薬剤師・勉強】
疥癬・原虫・寄生虫治療薬の使い分けを解説しています。音声のみで恐縮ですが、通勤途中や寝る前、スキマ時間の勉強に。文章をご希望の方はブログをご参照ください。疥癬・原虫・寄生虫治療薬の使い分け/※2021/03/21現在の情報です。定期的に更新致しま...

公衆衛生の改善に伴い減少傾向にありますが、表題のような感染症も時々目にすることがあります。

これらの薬に関しては薬剤師国家試験でもほとんど学習しないため、現場での初見の際は戸惑う薬剤師の方も多いのではないでしょうか。

今回はそれらのうち、比較的有名な感染に対する治療薬について、まとめてみます。

疥癬治療薬

ヒゼンダニによる皮膚感染症。

家族内・院内・施設内感染が問題となります。

手掌・指間・手首などに皮疹を生じ、激しい痒み(特に夜間)を起こします。

陰茎・陰嚢の結節や「疥癬トンネル(線状の皮疹として見える巣穴)」も特徴的な所見。

広範囲に多数のヒゼンダニが感染する「角化型疥癬(ノルウェー疥癬)」というものもあります。

通常の湿疹と間違えてステロイドを塗布すると増悪することがあります。

ガイドラインにおける治療薬は、通常疥癬ではイベルメクチン内服 or フェノトリン外用、角化型疥癬ではそれらを併用する場合もあります。

ストロメクトール®︎錠(イベルメクチン)

疥癬に使用される内服薬。

添付文書上は単回投与が基本ですが、卵の状態には効果がないため、孵化した隙にもう一度(通常は1週間後)投与することも多いです。

高脂肪食により血中濃度が上がるため、「空腹時、水で」飲みます。間違っても牛乳などで飲んではいけません。

1回量は200μg/kg。

後述のスミスリン®︎ローションにもいえることですが、投与後、ダニ死滅後の虫体成分によるアレルギー反応のため、一過性に痒みが増悪することがあるため、説明しておくとよいでしょう。

15kg未満の小児や、妊婦・授乳婦では安全性が確立していないため、後述のスミスリン®︎が選択肢となります。

スミスリン®︎ローション(フェノトリン)

1本(30g)を首から下の全身に塗布し、12時間後に洗い流す、という派手な使用方法。

ストロメクトール®︎の方が使用しやすいですが、患者背景によってはこちら。

1週おきに最低2回は使用。

その他

保険適応のあるものとしてはイオウ剤外用、適応外使用が認められているものとしてクロタミトン(オイラックス®︎クリーム)があります。

オイラックス®︎「H」はステロイドが入っているため不可。

全身に塗布し24時間後に洗い流す、を数日繰り返します。

推奨度はC1(イベルメクチン・フェノトリンはA)なので優先度はやや低い。

先天性トキソプラズマ症予防薬

Toxoplasma gondii による原虫感染症。

生肉や加熱不十分の肉、猫の糞などとの接触による経口・経気道感染が原因です。

多くの場合無症状ですが、妊婦が初感染の場合、胎児への垂直感染が問題となります(死産・流産・先天異常)。

感染した胎児の約10%が先天性トキソプラズマ症を発症。

網脈絡膜炎(視力障害)が特徴的なほか、脳・神経にも異常をきたし、12%は4年以内に死亡、生存しても85%に神経学的異常を起こします。

妊娠初期ほど感染率は低いが重症。

妊娠後期ほど感染率は高いが軽症。

以下、治療薬。

スピラマイシン

以前は抗菌薬である「アセチルスピラマイシン」が適応外で使用されていましたが、2018年に「スピラマイシン錠150万単位」が、トキソプラズマ症の正式な適応をもって承認されました。

診断後すぐに開始し、用法・用量は「6T分3、分娩まで継続」。

ちなみに適応外でアセチルスピラマイシンを使用していた時代は「1回300mgを1日4回、3週服用、2週休薬、分娩まで継続」などといった使い方をしていました。

トリコモナス症治療薬

原虫由来で、性感染症(STD)のひとつ。クラミジア・ヘルペス・尖圭コンジローマ・淋菌・梅毒、などと比べるとややマイナーですが、女性の5〜10%は感染するなどともいわれています。

特異的な色・悪臭の分泌物(おりもの)、排尿痛などが症状。

男性も感染し、一旦治っても性交渉によって感染させ合うことがあるため(ピンポン感染)、パートナーも同時に治療する場合もあります。

以下、治療薬。

フラジール®︎内服錠/膣錠(メトロニダゾール)

第一選択的に使用。

内服錠は妊娠3ヵ月以内は禁忌のため、体内に移行しない膣錠が適当です。

ジスルフィラム様作用によりアルコールによる有害作用を惹起するため、内服中は禁酒。

一般に、内服錠は10日間、膣錠は10〜14日間使用します。

使用頻度は低いですが、同系統のチニダゾールという薬もあります。

アメーバ赤痢治療薬

赤痢アメーバによる原虫感染症。

衛生状態の悪い環境での飲食物や、男性同性愛者間の口・肛門での性交などにより発症します。

腸管内症状としては粘血便・下痢など。

進行すると全身性の腸管外症状としてアメーバ性肝膿瘍などを発症することもあります。

以下、治療薬。

フラジール®︎内服錠/膣錠(メトロニダゾール)

トリコモナス症でも使用するこちらが第一選択。

ただし用法が異なり、アメーバ赤痢では「1回500〜750mgを1日3回、10日間」と高用量。

ちなみにアメーバ赤痢と同様の原因で起こり、混合感染もみられる「ジアルジア症(ランブル鞭毛虫症)」にも使用されます。

アメパロモ®︎カプセル(パロモマイシン)

赤痢アメーバには「栄養型」と呼ばれる活動状態と「シスト(嚢子・のうし)」と呼ばれる休眠状態の2つの型があります。

このうちのシストが主な感染源となるのですが、メトロニダゾール/チニダゾールはシストへの効果が少ないため、急性期の治療をそれらで行なった後などに、このアメパロモ®︎を使用することがあります。

ただし、効果を発揮するのは腸管内のみなので、全身性アメーバ症には効果がありません。

その他

コンバントリン®︎(ピランテル)

昔は小学生の時に検査が義務付けられていた「蟯(ぎょう)虫」などに使われる薬。

現在では衛生環境の改善に伴い感染率も下がり、検査義務もなくなったため、あまり使用はしません。

10mg/kgを単回投与。蟯虫の場合は卵・幼虫に効果が低いため、2〜3週後にもう一度服用することが多いです。

エスカゾール®︎(アルベンダゾール)

北海道に生息するキタキツネの糞便などから感染する「エキノコックス症」の薬。

放置すると肝不全などを引き起こす、致死率の高い疾患。

優先されるのは手術ですが、手術不能な病変の抑制にこちらが使用されます。

ビルトリシド®︎(プラジカンテル)

吸虫感染症の薬。

比較的有名なものに「横川吸虫」など。

ただ、あまり自覚症状がなく、検便などで発見されることも多いです。

おまけ:アニサキス・クリプトスポリジウム

寄生虫による食中毒で有名なこの2つですが、現在は有効性が確認されている薬はないため、対症療法となります(or アニサキスの場合は鉗子で虫体を摘出)。

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