音声解説はコチラ↓ 耳で覚える薬の使い分け〜月経困難症治療薬〜【薬剤師・勉強】月経困難症治療薬の使い分けを解説しています。音声のみで恐縮ですが、通勤途中や寝る前、スキマ時間の勉強に。文章をご希望の方はブログをご参照ください。月経困難症治療薬の使い分け/※2021/04/23現在の情報です。定期的に更新致しますが、最新の情報...
月経に伴う症状(生理痛など)は個人差が大きいですが、日常生活への支障が大きく、鎮痛薬のみでは対処が難しい場合もあります。
また、子宮収縮(生理痛)が強いと、月経血の逆流により子宮内膜症のリスクが上がるといわれています。
今回は、それらのケースで使用される月経困難症治療薬について、まとめてみます。
低用量女性ホルモン配合薬(LEP:Low Dose Estrogen Progestin)
鎮痛薬のみでは対処が難しい月経困難症に対し、第一選択的に使用される薬です。
避妊に用いる低用量ピル(OC: Oral Contraceptives)と比べ、エストロゲンの量が少なくなっています。
共通の特徴としては
<血栓症に注意> ・エストロゲンが肝臓にて凝固系を活性化する ・ヤーズ®︎にてブルーレター ・15本/日以上の喫煙者・35歳以上などは特に注意
<月経開始に合わせて服薬開始> ・開始・休薬の仕方は薬剤により異なる ・飲み忘れ時の対応も重要(後述)
<頭痛・悪心・不正出血に注意> ・頭痛・悪心はエストロゲンの量に依存 ・低用量にすれば頭痛・悪心は軽減されるが、 反面、不正出血が増加しやすい
<妊娠時は服用しない>
などがあります。
以下、各論。
ルナベル®︎配合錠LD/ULD
配合成分はノルエチステロン/エチニルエストラジオール。
正式に保険適応を得たものとしては国内初のLEP製剤。
服用方法は、月経第1〜5日に開始し、3週服用・1週休薬(3投1休)。
血栓・頭痛・悪心などの副作用軽減のため、エチニルエストラジオールを更に低用量化したものがULD。
まずはULDから試して、不正出血が多いようならLDに変更したりします。
ちなみにエチニルエストラジオールの量は
・ルナベル®︎LD→0.035mg ・ルナベル®︎ULD→0.020mg ・ヤーズ®︎/ヤーズフレックス®︎→0.020mg ・ジェミーナ®︎→0.020mg
です。下3つは「超低用量ピル」とも。
ヤーズ®︎/ヤーズフレックス®︎配合錠
配合成分はドロスピレノン/エチニルエストラジオール。
発売はルナベル®︎LDが先ですが、エストロゲンを更に減量した「超低用量ピル」としてはわが国初の薬。
エチニルエストラジオール量は0.020mgで、副作用リスクの低減が期待できます(ただし不正出血には注意)。
また、ドロスピレノンが
・抗アンドロゲン作用(男性ホルモン↓) ・抗アルドステロン作用(利尿作用)
を持つため、にきび・むくみの低減効果も期待できます。
反面、抗アルドステロン作用によるカリウム上昇に注意。
服用方法は
<ヤーズ®︎> ・28日周期(24日は実薬、最後の4日はプラセボ) <ヤーズフレックス®︎> ・28日周期(24日服用、4日休薬) または ・最大124日周期 (連続服用24日以降に3日連続出血した場合 or 連続120日服用した場合は4日休薬)
です。
ヤーズフレックス®︎の124日周期であれば、生理を最小で年3回に減らすことが可能です。
とはいえ、出血なく連続120日服用できるケースは少なく、平均周期日数は40〜50日程度であるようです。
ちなみにヤーズフレックス®︎は「子宮内膜症に伴う疼痛の軽減」にも適応があります。
ヤーズ®︎は血栓症でのブルーレター発出により敬遠されがちですが、このカテゴリーの薬はすべてにおいて注意が必要なのは変わりありません。
ジェミーナ®︎配合錠
配合成分はレボノルゲストレル/エチニルエストラジオール。
こちらもエチニルエストラジオール0.020mgの超低用量ピル。
更に黄体ホルモンであるレボノルゲストレルは血栓症の発現リスクが低いとされています。
反面、アンドロゲン作用がやや高いため、にきび・脂質代謝異常・性欲亢進などに注意。
用法は
・21日投与→7日休薬 ・77日投与→7日休薬
から選択。
77日投与では出血の有無に関わらず3ヵ月サイクルにできることもメリットのひとつ。
ちなみに、レボノルゲストレルを放出するリングを子宮内に装着するミレーナ®︎という子宮内システム(IUS: Intrauterine System)もあります。
漢方薬
・LEP製剤のリスクが懸念される場合 ・本人がLEP製剤に抵抗を示す場合 ・比較的軽症 ・挙児希望
などの場合では、漢方薬を使用することも多いです。
実証(ガッチリ型)では桃核承気湯 虚証(やせ型)では当帰芍薬散 鎮痛効果に期待して芍薬甘草湯
などを使用します。
LEP製剤飲み忘れ時の対応
LEP製剤は正しく服用することが特に重要です。
万一飲み忘れた場合は、気づいた時点で忘れた1回分を服用し、当日の薬も規定の時間に服用します。
つまり、この薬に関しては2回分を同日に服用することがあるということになります。
他の薬は基本的に忘れた分は飛ばすことが多いため、この辺りにも注意が必要です。
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