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アルコール依存は、行動・社会的な問題をはじめ、肝障害・高血圧・糖尿病・うつ・がんなど、様々な疾患の背景になることから、その治療の必要性が高まってきています。
今回はその治療薬の使い分けについて、まとめてみます。
治療目標は断酒か節酒か
アルコール依存症の治療目標は主に以下の2つです。
・断酒(完全に酒を断つ) ・節酒(飲酒量を減らす)
これにより、使用する薬もやや異なります。
一般に、心身の症状が重篤な場合や、社会的な問題が大きい場合は断酒が考慮されます。
アカンプロサート(レグテクト®︎)
「断酒」の第一選択薬。
グルタミン酸作動性神経を抑制し「飲酒欲求」を抑える薬です。
プレアルコホリックのような軽症例より、本物のアルコール依存症に対してより有効です。
用法は1回666mg(2T)を1日3回。それ以外の使用方法は提示されていません。
原則として24週までの投与ですが、必要に応じて延長は可能。
空腹時投与では血中濃度が上昇し、下痢などの副作用があらわれやすくなる可能性があるため「食後投与」とされています。
ナルメフェン(セリンクロ®︎)
「節酒」の第一選択薬。
選択的オピオイド受容体調節薬であり「飲酒量低減薬」。
完全にお酒をやめさせるのではなく「飲酒時、つい飲み過ぎてしまう」のを防ぐ薬です。
飲酒1〜2時間前に服用ですが、少し遅れても飲んでおくほうがよいでしょう。
飲酒しない日は飲む必要はありません。
悪心・鼻咽頭炎・浮動性めまいなどの副作用が報告されています。服用に応じて消失することも多いですが、吐き気止めを併用することもあります。
シアナミド(シアナマイド®︎)
断酒・節酒の第二選択薬といった位置づけ。
断酒か節酒かで用量が異なります。
ALDH(アルデヒド脱水素酵素)を阻害しアセトアルデヒドを蓄積させ、アルコールを飲んだ時の不快症状(吐き気・頭痛・顔面紅潮など)を増幅させます。
服用しなかったら意味がない上、服用した上で飲酒すると有害作用が起こるため、本人にしっかりとした禁酒意志があることが前提です。
作用は投与5〜10分に始まり12〜24時間ほど持続する(ジスルフィラムと比べると短時間型)。
飲酒抑制効果の持続が確認できれば、1日おきの投与も可能。
肝障害などに注意。
ジスルフィラム(ノックビン®︎)
作用機序はシアナマイドと同様。
シアナマイドが液剤なのに対し、こちらは散剤。
シアナマイドと比較し長時間型で、3時間で効果発現し、1週間前後持続します。
維持期は1週ごとに1週間の休薬をおく場合もあります。
離脱症状改善薬
アルコール中止による離脱症状(精神不安・振戦せん妄など)を抑えるため、ベンゾジアゼピン系抗不安薬などが使用されることがあります。
半減期が長く依存性の低いジアゼパムなどが標準的に使用されます。
肝機能を考慮する際や高齢者はロラゼパムなども選択肢となります。
<参考> ・抗不安薬の使い分け
栄養状態改善薬
アルコール多飲による栄養障害として
・ビタミンB1欠乏→ウェルニッケ脳症 ・ナイアシン欠乏→ペラグラ
などが起こることがあります。
そのため、各種ビタミン製剤が使用されることがあります。
適応外使用
抗てんかん薬であるトピラマート・ゾニサミドや、筋弛緩薬であるバクロフェンが、飲酒量低減に有効であったという報告があります。
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